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NISAは、老後資金づくりにも活用できる制度です。
2024年から始まった新しいNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できます。政府広報オンラインでも、年間投資枠としてつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円が案内されています。
ただし、60代からNISAを考える場合、若い世代と同じように「どれだけ増やすか」だけを見てはいけません。
60代のNISAで本当に大切なのは、増やすことよりも、取り崩し方を決めておくことです。
同じ60代でも、状況は大きく違います。
60歳で退職金を受け取る人もいれば、65歳以降も働く人もいます。住宅ローンが残っている人、親の介護がある人、子どもの教育費が残っている人もいます。
そのため、60代のNISAは「何年運用できるか」を先に考える必要があります。
5年以内に使う予定のお金までNISAに入れてしまうと、相場が下がった時期に取り崩すことになるかもしれません。一方で、10年以上使わない可能性が高いお金であれば、非課税で運用する意味が出てきます。
退職金を受け取ると、NISAの非課税枠を早く使った方がよいと感じるかもしれません。
しかし、退職金は一度に大きく入ってくるため、使い道を分けずに投資へ回すと危険です。
退職金は、少なくとも次のように分けて考えたいところです。
NISAに向いているのは、主に10年以上使わない可能性が高いお金です。生活費や税金、健康保険料、住宅ローン、医療費に使うお金まで投資に回す必要はありません。
老後資金では、積み立てる時期よりも取り崩す時期の方が難しくなります。
相場が良い時期に取り崩せるとは限りません。年金だけで生活費が足りない場合、毎月一定額を取り崩す必要が出てきます。
そのため、NISAを使う場合は、あらかじめ取り崩しの順番を決めておくことが大切です。
たとえば、生活費の不足分は預貯金から出し、NISAは大きな支出や将来の余裕資金として残す方法があります。逆に、NISAを一定割合ずつ取り崩し、預貯金を安心資金として残す考え方もあります。
どちらがよいかは、年金額、生活費、健康状態、家族構成、相場への耐性によって変わります。
NISAは便利な制度ですが、老後資金のすべてを解決するものではありません。
老後資金には、年金、退職金、預貯金、NISA、iDeCo、保険、住宅ローン、医療費、相続予定などが関係します。
NISAの銘柄選びだけを考える前に、家計全体の設計を確認する必要があります。
60代のNISAで見落としやすいのは、買う商品よりも売る順番です。現役時代の積立投資は、毎月買い続けることが中心になります。しかし退職後は、生活費の不足分を取り崩す局面が出てきます。
相場が良いときに取り崩せるとは限りません。大きく下がった年に生活費のために売却すると、資産寿命が短くなる可能性があります。だからこそ、NISAに入れる前に、預貯金で何年分の生活費を持つかを決めておく必要があります。
退職金をNISAへ入れる場合は、生活費用の預貯金を残したうえで、長期で使わない部分だけを対象にするのが現実的です。
投資は、上がる時期より下がる時期の行動で差が出ます。60代では、下落時に追加投資する余力が限られることもあります。だから、相場が2割下がったらどうするか、生活費はどこから出すか、何年待てるかを先に決めておきます。
下落時に不安で売却する可能性が高いなら、そもそもNISAに入れる金額が大きすぎるのかもしれません。制度の非課税メリットより、本人が安心して続けられる金額を優先すべきです。
60代の資産管理では、お金を「すぐ使うお金」「数年以内に使うお金」「当面使わないお金」に分けると判断しやすくなります。すぐ使うお金は預貯金で確保します。数年以内に使うお金は、値動きの大きい商品に入れすぎないようにします。当面使わないお金だけをNISAなどで長期運用する考え方です。
この分け方をしないままNISAを始めると、相場が下がったときに生活費のために売ることになりかねません。退職後は収入を増やして穴埋めするのが現役時代より難しくなるため、取り崩しの順番を決めておくことが大切です。
NISAは便利な制度ですが、老後資金の不安を自動的に解決するものではありません。
60代のNISAでは、増やすことだけでなく、いつ使うか、どの順番で取り崩すかが重要です。
退職金を受け取ったら、すぐ使うお金、数年以内に使うお金、長く使わないお金に分けましょう。
NISAは長期で使えるお金に向いています。生活費や税金、健康保険料まで投資へ回さず、年金と退職金の全体像を見たうえで判断することが大切です。
この記事を書いた人・編集監修
Hajime Maeda。AFP、実務経験20年。退職金、老後資金、保険、相続、教育費など、家計全体を整理する相談業務を行っています。記事では制度の一般論だけで結論を急がず、実際の家計で確認すべき順番を重視しています。
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