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年金繰下げで加給年金はどうなる?夫婦で確認したい注意点

2026.06.11

年金の繰下げ受給は、老後資金を考えるうえで有力な選択肢のひとつです。

老齢年金は65歳で受け取らず、66歳以後75歳までの間で繰下げると、1か月あたり0.7%ずつ増額されます。75歳まで繰下げた場合の増額率は最大84%です。

ただし、夫婦で年金を考える場合、「繰下げれば必ず得」と単純には言えません。特に確認したいのが、加給年金と振替加算です。

年金額そのものの増減だけを見て判断すると、夫婦全体の受け取り方を見誤ることがあります。

加給年金とは何か

加給年金は、厚生年金に長く加入していた人が一定の条件を満たす配偶者や子を扶養している場合に、老齢厚生年金に加算されることがある仕組みです。

一般的には、夫が年上で会社員期間が長く、妻が年下というケースで話題になりやすい制度です。

ただし、誰にでも自動的につくものではありません。厚生年金の加入期間、配偶者の年齢、配偶者自身の年金状況、生計維持関係など、複数の条件を確認する必要があります。

繰下げ中は加給年金を受け取れない場合がある

年金を繰下げると、本来受け取れるはずの老齢年金を受け取らずに待つことになります。

厚生労働省は、加給年金額や振替加算額は繰下げによる増額の対象にならないと説明しています。また、加給年金や振替加算を受けながら一方の年金だけを繰下げる方法もあるため、老齢基礎年金と老齢厚生年金を分けて考えることが重要です。

つまり、「年金を75歳まで繰下げる」と一言でいっても、老齢基礎年金だけを繰下げるのか、老齢厚生年金だけを繰下げるのか、両方を繰下げるのかで、夫婦の受取総額は変わります。

配偶者の年金開始時期も一緒に見る

夫婦の年金相談でよく起きるのは、夫の年金だけを見て判断してしまうことです。

たとえば、夫が厚生年金を繰下げると年金額は増えます。しかし、その間に加給年金を受け取れない期間が出る場合があります。妻の老齢基礎年金の開始、振替加算、夫婦の年齢差によっては、単純な損益分岐点だけでは判断できません。

また、夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、遺族年金との関係も出てきます。

老後のお金は、本人が何歳まで生きるかだけでなく、配偶者がその後どの年金を受け取るかまで含めて考える必要があります。

年金繰下げを検討する前に整理すること

年金の繰下げを検討する前に、次の情報を整理しておくと判断しやすくなります。

  • 夫婦それぞれの年金見込額
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金の内訳
  • 加給年金の対象になる可能性
  • 配偶者の年齢と年金開始時期
  • 退職金や預貯金から何年生活費を出せるか
  • 働く予定があるか
  • 健康状態や家族歴

この整理をせずに「75歳まで待てば84%増える」という部分だけを見ると、夫婦全体では別の選択肢の方が合っていたということもあり得ます。

年金は個人単位、生活は夫婦単位

年金制度は個人ごとに計算されます。

しかし、実際の生活費は夫婦単位で出ていきます。住居費、食費、医療費、車の維持費、介護の備えなどは、どちらか一人の年金額だけでは判断できません。

年金の繰下げを考えるときは、夫婦それぞれの年金、退職金の取り崩し、預貯金、NISA、保険、住宅ローンを一枚の表に並べて見ることが大切です。

夫婦で見ると判断が変わるケース

年金繰下げは本人の年金額を増やす制度ですが、生活は夫婦単位です。たとえば夫が厚生年金を繰下げ、妻が年下で加給年金の対象になる可能性がある場合、夫本人の年金だけを見れば増額メリットがあります。しかし、繰下げ期間中に受け取れない加給年金があるなら、夫婦全体の受取額は別に計算する必要があります。

一方で、妻にも厚生年金期間があり、自分の老齢厚生年金を受け取る予定がある場合は、夫の年金、妻の年金、遺族年金の関係まで見ます。夫婦の年齢差、働き方、健康状態によって、老齢基礎年金だけ繰下げる、老齢厚生年金だけ受け取るなど、選択肢が分かれます。

つまり、繰下げ受給は「75歳まで待つかどうか」ではなく、「どの年金を、誰が、何歳から受け取るか」という組み合わせの問題です。

年金事務所で確認したいこと

相談前に、ねんきん定期便だけで判断するのは不十分です。年金事務所やねんきんネットで確認したいのは、老齢基礎年金と老齢厚生年金の内訳、加給年金の対象可能性、振替加算、配偶者の年金見込額です。

特に加給年金や振替加算は、名称だけ知っていても自分たちに関係するか判断しにくい制度です。対象になる可能性がある場合は、繰下げによって受け取れない期間が出るか、どちらの年金を繰下げるかで扱いが変わるかを確認します。

夫婦の年金判断表

  • 夫婦それぞれの老齢基礎年金はいくらか
  • 夫婦それぞれの老齢厚生年金はいくらか
  • 加給年金・振替加算の対象になる可能性はあるか
  • 退職金と預貯金で何歳まで生活費をつなげるか
  • 片方に万一があった場合、残された配偶者の年金はいくらになるか

繰下げを選ばない方がよい場合もある

繰下げ受給は、長く生きれば有利になりやすい制度です。しかし、すべての人に向いているわけではありません。年金開始までの生活費を退職金から大きく取り崩す必要がある場合、病歴や健康不安が強い場合、配偶者の生活費を早く安定させたい場合は、無理に繰下げない選択もあります。

また、増額された年金を受け取るようになると、税金や社会保険料、医療・介護の自己負担に影響することがあります。額面の年金額だけで判断すると、思ったほど手取りが増えない場合があります。

繰下げは「得か損か」だけでなく、生活費をどこから出すか、配偶者に何を残すか、本人が安心して暮らせるかで判断します。

まとめ

年金繰下げは、老後資金を増やす選択肢になり得ます。

ただし、加給年金や振替加算は繰下げによる増額の対象ではなく、受け取り方によって夫婦全体の収支が変わることがあります。

年金は「何歳から受け取るか」だけでなく、「夫婦でどう組み合わせるか」が重要です。退職金を何年使えるか、配偶者の年金がいつ始まるか、片方に万一があった場合どうなるかまで含めて整理しておきましょう。

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この記事を書いた人・編集監修

Hajime Maeda。AFP、実務経験20年。退職金、老後資金、保険、相続、教育費など、家計全体を整理する相談業務を行っています。記事では制度の一般論だけで結論を急がず、実際の家計で確認すべき順番を重視しています。

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