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年金の繰下げ受給を考える前に確認したいこと

2026.05.14

年金の繰下げ受給は、老後資金を考えるうえで注目されやすい制度です。受け取り開始を遅らせることで年金額が増えるため、「長生きするなら繰下げた方が得」と言われることがあります。

ただし、繰下げ受給は増額率だけで判断するものではありません。受け取りを遅らせる期間の生活費をどうするのか、退職金をどれだけ取り崩すのか、配偶者の年金はどうなるのか、税金や社会保険料への影響をどう見るのか。確認すべきことがいくつもあります。

この記事では、年金の繰下げ受給を考える前に確認したいポイントを整理します。制度に関する数字は、日本年金機構と厚生労働省の情報に基づきます。

1|繰下げ受給の基本を確認する

日本年金機構によると、老齢年金は、原則65歳から受け取る年金を66歳以後75歳までの間で繰り下げて受け取ることができる場合があります。繰下げによる増額率は、65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数に0.7%を掛けて計算され、最大84%とされています。

この数字だけを見ると、大きなメリットに見えます。65歳で受け取るより、70歳、75歳と遅らせるほど毎年の年金額は増えます。

しかし、繰下げ中はその年金を受け取らない期間が生まれます。増額された年金を将来受け取る代わりに、今の生活費を別の資金でまかなう必要があるということです。

2|最初に見るべきは「繰下げ中の生活費」

繰下げを検討するとき、最初に見るべきは損益分岐点ではなく、繰下げ中の生活費です。65歳から70歳まで繰り下げるなら、その5年間の生活費を何でまかなうのかを確認します。

働く収入があるのか、配偶者の年金があるのか、退職金や預貯金を取り崩すのかによって、繰下げの現実性は変わります。年金額が増えても、その前に退職金を大きく取り崩して不安が増えるなら、家計全体としてよい選択とは限りません。

特に退職金を使って繰下げ期間をつなぐ場合、退職金の役割が変わります。運用資金ではなく、年金開始までの生活資金として使う部分を明確にする必要があります。

3|夫婦の場合は、片方だけで判断しない

夫婦の老後資金では、夫婦それぞれの年金開始時期を確認する必要があります。片方の年金を繰り下げ、もう片方は通常通り受け取るという組み合わせも考えられます。

ただし、年金制度には老齢基礎年金、老齢厚生年金、加給年金など、個別事情によって確認が必要な項目があります。すべての家庭に同じ答えはありません。

夫婦で大切なのは、毎月の生活費をどちらの年金で支えるのか、片方に万一のことがあった場合に残る収入はどうなるのかを確認することです。年金額だけでなく、生活の安定感を見ます。

4|税金・社会保険料も確認する

繰下げ受給で年金額が増えると、受け取る年金収入も増えます。年金収入が増えること自体はメリットですが、税金や社会保険料に影響する可能性があります。

ここは個別の所得、家族構成、自治体、医療保険の加入状況によって変わるため、記事だけで断定することはできません。確認すべきなのは、「額面の年金が増えること」と「手取りが同じ割合で増えること」は同じではないという点です。

繰下げを検討するときは、年金見込額だけでなく、手取りベースで家計にどのくらい残るかを確認する必要があります。

5|健康状態と気持ちも判断材料に入れる

繰下げ受給は、将来の年金額を増やす選択です。そのため、健康状態、働き方、生活への考え方も判断材料になります。

長く働く予定があり、65歳以降も収入が見込める方にとっては、繰下げを検討しやすい場合があります。一方で、早めに仕事を減らし、元気なうちに旅行や趣味にお金を使いたい方にとっては、早く受け取る安心感の方が合う場合もあります。

年金は損得だけでなく、暮らし方の選択でもあります。増額率は重要ですが、自分たちがどう暮らしたいかを置き去りにしないことが大切です。

まとめ|繰下げ受給は、年金だけでなく退職金と一緒に考える

年金の繰下げ受給は、老後資金を安定させる選択肢になり得ます。日本年金機構が示すように、繰下げによる増額率は1か月あたり0.7%で、最大84%です。

しかし、繰下げ中の生活費、退職金の取り崩し、夫婦の年金、税金・社会保険料、健康状態を確認しないまま決めるのは危険です。年金を増やすことだけを目的にせず、家計全体で無理がないかを確認しましょう。

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この記事を書いた人

Hajime Maeda(AFP、実務経験20年)。年金、退職金、老後資金をまとめて考える個別相談を行っています。

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