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退職した年の住民税と健康保険料|退職金を使う前に残すお金

2026.06.04

退職金を受け取ると、「住宅ローンを返す」「運用を始める」「旅行やリフォームに使う」など、使い道を先に考えたくなります。

ただ、退職直後のお金で見落としやすいのが、退職した年から翌年にかけて出ていく税金と社会保険料です。

特に会社員時代は、住民税や健康保険料が給与から天引きされていたため、実際にいくら負担していたかを意識しないまま退職を迎える方が少なくありません。退職後は収入が減っているのに、前年の所得をもとにした負担が残ることがあります。

退職金をどう使うかを考える前に、まず「使ってはいけないお金」を分けておくことが大切です。

退職した年に住民税が重く感じる理由

住民税は、前年の所得をもとに計算されます。

そのため、退職した後に収入が下がっても、前年に会社員として給与を受け取っていた場合は、その所得に応じた住民税を支払うことになります。

会社員の間は毎月の給与から住民税が天引きされますが、退職後は残りの住民税を普通徴収で納める、または退職時に一括徴収されることがあります。

ここで問題になるのは、退職後の家計感覚です。

毎月の給与がなくなったあとに、住民税の納付書が届くと、「思っていたより手元資金が減る」と感じやすくなります。退職金を受け取った直後に大きな支出を決めてしまうと、後から生活費の余裕がなくなることがあります。

健康保険は退職後に選択が必要になる

退職後の健康保険には、主に次の選択肢があります。

  • 会社の健康保険を任意継続する
  • 国民健康保険に加入する
  • 家族の健康保険の被扶養者になる

どれが有利かは、退職前の給与、退職後の収入見込み、家族構成、自治体の国民健康保険料などによって変わります。

協会けんぽも、退職後の健康保険には任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者という選択肢があると案内しています。つまり、退職後の健康保険は「自動的に一番安いものになる」わけではありません。

退職前に会社から説明を受けても、その場では判断しきれないことがあります。特に夫婦で収入や年金の受け取り方が変わる時期は、健康保険料だけでなく、年金、住民税、医療費負担まで合わせて見る必要があります。

退職金から先に分けておきたい3つのお金

退職金を受け取ったら、最初に次の3つを分けておくと家計が安定しやすくなります。

1. 住民税・健康保険料・年金保険料に備えるお金

退職後すぐに年金生活へ入る人もいれば、再就職や短時間勤務をする人もいます。

どちらの場合でも、退職直後は制度の切り替わりが多く、支払い時期がずれることがあります。住民税や健康保険料の納付書が届いてから慌てないよう、少なくとも1年分の公的負担を別枠で見ておくと安心です。

2. 生活費の予備資金

退職後は、給与収入がなくなる、または減る一方で、生活費は急に小さくなりません。

食費、水道光熱費、通信費、車の維持費、医療費、冠婚葬祭費などは、退職前と同じように発生します。年金の受給開始まで時間がある場合や、退職後しばらく働かない予定の場合は、生活費の予備資金を先に確保しておく必要があります。

3. 使い道を決めないお金

退職直後は、気持ちが大きく動く時期です。

長く働いてきた区切りとして、まとまった支出をしたくなるのは自然です。ただ、退職から半年ほど経つと、実際の生活費、健康状態、家族の予定、年金の見込みが見えやすくなります。

退職金の全額に使い道を決めず、一定額は「判断を保留するお金」として残しておくと、後から軌道修正しやすくなります。

退職金の運用は税金と保険料を分けた後で考える

退職金の運用を考えること自体は悪くありません。

ただし、退職金は「増やすお金」だけではなく、「生活をつなぐお金」でもあります。税金や健康保険料の支払いを見込まずに運用へ回すと、相場が下がった時期に取り崩しが必要になることがあります。

退職金を運用する場合でも、生活費、税金、社会保険料、住宅ローン、医療費の見通しを先に置き、その上で余裕資金を考える順番が現実的です。

よくある失敗ケース

退職金を受け取った直後に多いのは、「まとまったお金が入った安心感」で支出を先に決めてしまうケースです。住宅ローンを大きく返す、車を買い替える、リフォームする、運用商品を契約する。ひとつひとつは悪い判断ではありませんが、税金と社会保険料を分ける前に決めると、半年後に手元資金が薄くなります。

特に退職した年から翌年にかけては、住民税、健康保険料、場合によっては国民年金保険料や介護保険料の負担が見えにくくなります。現役時代は給与天引きだった支払いが、退職後は納付書で届くことがあります。心理的には「急に請求が来た」ように感じますが、実際には以前から負担していたお金が見える形になっただけです。

もうひとつ多いのは、退職金を一度に複数の目的へ割り振ってしまうケースです。たとえば、住宅ローン返済、NISA、旅行、子どもへの援助を同時に決めると、生活防衛資金が後回しになります。退職後は毎月の給与がなくなるため、現役時代よりも「現金の厚み」が重要になります。

退職金から残す金額の考え方

目安としては、まず退職後1年分の生活費と、公的負担の支払い予定額を別にして考えます。ここでいう生活費は、食費や光熱費だけではありません。固定資産税、車検、保険料、医療費、冠婚葬祭費、家電の買い替えなど、毎月ではない支出も含めます。

次に、年金開始までの空白期間を確認します。60歳で退職し、65歳まで公的年金を受け取らない場合、5年分の生活費をどうつなぐかが問題になります。再就職する場合でも、収入が現役時代より下がるなら、不足分は退職金や預貯金から出ることになります。

最後に、使い道を決めないお金を残します。退職後半年から1年たつと、実際の生活費、健康状態、家族の予定が見えやすくなります。退職直後に全額の方針を決めるより、一定額を保留する方が、後悔を防ぎやすくなります。

相談前チェックリスト

  • 退職金の額面ではなく手取り額を確認したか
  • 退職後1年分の住民税・健康保険料を見込んだか
  • 年金開始までの生活費不足額を計算したか
  • 住宅ローンやリフォームより先に生活防衛資金を分けたか
  • NISAや運用に回してよい金額を、使う時期で分けたか

退職後1年目の家計表で見る順番

退職後の家計を整理するときは、月単位ではなく1年単位で見る方が実態に合います。住民税や固定資産税、保険料、車検、帰省費用、家電の買い替えなどは毎月均等に出ていくわけではありません。月の生活費だけを見ると余裕があるように見えても、年払いの支出が重なる月に資金が減ることがあります。

退職金を使う前に、まず「毎月出るお金」「年に数回出るお金」「予定外に出る可能性があるお金」に分けます。そのうえで、退職金から生活防衛資金、公的負担、使い道を決めないお金を先に取り置きます。この順番にすると、運用や住宅ローン返済の判断も現実的になります。

退職金を増やすことより先に、退職金を途中で崩しすぎない仕組みを作ることが大切です。

まとめ

退職した年は、収入が減る一方で、前年所得をもとにした住民税や健康保険料の負担が残ることがあります。

退職金を受け取ったら、まず使うお金ではなく、残しておくお金を決めることが大切です。

住民税、健康保険料、生活費の予備資金を先に分けておくと、住宅ローン返済や資産運用の判断も落ち着いて行いやすくなります。

退職金の使い道は、商品選びよりも順番が重要です。税金と社会保険料を確認したうえで、年金、生活費、住宅ローン、保険まで一度整理しておきましょう。

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この記事を書いた人・編集監修

Hajime Maeda。AFP、実務経験20年。退職金、老後資金、保険、相続、教育費など、家計全体を整理する相談業務を行っています。記事では制度の一般論だけで結論を急がず、実際の家計で確認すべき順番を重視しています。

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