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退職金を受け取ったあと、「とりあえず預金に置いておく」という判断をされる方は少なくありません。大きなお金をすぐに動かすのは不安ですし、銀行や証券会社から提案を受けても、内容を理解しないまま契約するよりは、いったん預金で保留する方が落ち着いて考えられます。
一方で、退職金をすべて預金だけで持ち続けることにも注意点があります。預金は値下がりしにくい反面、物価上昇や長い老後期間に対して、購買力が少しずつ目減りする可能性があります。つまり「預金だから絶対安心」とも言い切れません。
この記事では、退職金を預金だけで置くメリットと注意点を、商品販売ではなく家計整理の視点で解説します。制度や税金に関する部分は、記事末尾の出典に基づいています。
退職金のうち、近いうちに使う予定があるお金は、預金で持つ意味があります。退職後の生活費、税金、社会保険料、住宅修繕、車の買い替え、医療費、親の介護などは、いつ必要になるか読み切れない部分があります。
このようなお金を投資信託や株式など値動きのある資産に入れてしまうと、必要な時期に値下がりしている可能性があります。預金は大きく増えるものではありませんが、使いたい時に使えるという点で、退職後の家計にとって重要な役割があります。
特に退職直後は、給与収入がなくなる、年金開始まで時間がある、住民税や社会保険料の支払い感覚が変わるなど、家計のリズムが変わります。この時期に手元資金があることは、精神的にも大きな支えになります。
退職金を考えるときは、金額ではなく使う時期で分けると判断しやすくなります。
1年以内、数年以内に使うお金は、預金や安全性を重視した形で持つのが基本です。反対に、10年以上使わない可能性が高いお金まで全額預金に置くと、物価上昇に対して弱くなる場合があります。
ここで大切なのは、退職金を「預金か運用か」の二択で考えないことです。生活費として確保するお金は預金、長期で考えられるお金はNISAや投資信託も検討、というように役割を分けます。
預金は元本が大きく変動しにくい一方で、物価が上がると実質的な価値が下がる可能性があります。たとえば同じ100万円でも、将来の物価が上がれば買えるものは減ります。
退職金は、受け取った時点では大きな金額に見えます。しかし老後期間が長くなるほど、生活費、医療費、介護費、住宅修繕費など、時間をかけて支出されていきます。預金だけで持つ場合は、「減らない安心」と同時に「増えにくい現実」も見ておく必要があります。
ただし、物価上昇があるからといって、すぐに全額を運用すべきという意味ではありません。投資には値下がりリスクがあります。預金と運用の比率は、家計の余裕、使う時期、夫婦の不安感によって変わります。
退職金は、税金の扱いも確認が必要です。国税庁は、退職金について退職所得控除や分離課税など、税負担が軽くなるよう配慮されていると説明しています。ただし、実際の手取り額は勤続年数や退職金の額、申告書の提出状況などによって変わります。
退職金を運用に回すかどうかは、額面ではなく手取り額で考えます。さらに、退職後1年目の税金や社会保険料、生活費を差し引いて、どのくらい長期資金として残るかを見ます。
手取り額と必要資金を確認しないまま運用を始めると、本来生活費として残すべきお金まで動かしてしまうことがあります。
退職金を受け取った直後に、いったん預金に置くことは悪い判断ではありません。むしろ、提案された商品を理解しないまま契約するより、冷静に整理する時間を取る方が安全です。
ただし、預金に置いたまま何年も確認しない状態は避けたいところです。毎年1回でも、生活費、年金、預金残高、運用資産、保険料を確認すると、老後資金の見通しがつかみやすくなります。
退職金は「守るお金」と「使うお金」と「長期で考えるお金」に分けることで、預金の良さも、運用の必要性も判断しやすくなります。
退職金を預金だけで置くことには、すぐ使える安心感があります。一方で、長期間すべてを預金だけで持つと、物価上昇や老後期間の長さに対して不安が残ることがあります。
大切なのは、預金が良いか悪いかではなく、退職金の中で預金がどの役割を担うのかを決めることです。生活費として必要なお金は預金で守り、長期で使わないお金については、NISAや運用も含めて慎重に検討します。
退職金を預金だけで置くか迷っている方へ
この記事を書いた人
Hajime Maeda(AFP、実務経験20年)。退職金、預金、資産運用をまとめて考える個別相談を行っています。
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