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老後資金はいくら必要?平均額より先に見る3つの数字

2026.05.14

老後資金の相談で多いのが、「結局、いくらあれば安心ですか」という質問です。ネットで検索すると、平均生活費や老後資金の目安がたくさん出てきます。数字を見ること自体は悪くありませんが、平均額だけで自分の老後を判断するのは危険です。

老後資金は、住む場所、住宅ローンの有無、車の必要性、夫婦の働き方、年金額、退職金、医療や介護への備えによって大きく変わります。名古屋で暮らす場合でも、都心部で車を持たない家庭と、郊外で車が必要な家庭では支出の形が違います。

この記事では、平均額を見る前に確認したい3つの数字を整理します。数値や制度の説明は記事末尾の出典に基づきます。

1|最初に見る数字は「毎月いくら使っているか」

生命保険文化センターの2025年度調査では、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考える最低日常生活費は月額平均23.9万円、ゆとりある老後生活費は平均39.1万円とされています。

この数字は参考になります。ただし、これはあくまで調査上の平均です。自分の家計に当てはめるには、今の支出を確認する必要があります。食費、水道光熱費、通信費、保険料、車関連費、固定資産税、医療費、交際費、旅行や趣味の支出を分けて見ます。

特に退職後は、現役時代より減る支出と、逆に増える支出があります。仕事関係の支出は減る一方、在宅時間が長くなれば光熱費が増えることもあります。旅行や趣味に時間を使うなら、生活費とは別に楽しみの予算も必要です。

老後資金の計算は、平均額ではなく「自分たちの月額支出」から始めるのが基本です。

2|次に見る数字は「年金でいくら入るか」

老後資金を考えるうえで、年金見込額の確認は欠かせません。毎月の支出から年金収入を差し引くと、退職金や預貯金で補うべき金額が見えます。

たとえば、毎月の支出が30万円で、夫婦の年金収入が22万円なら、毎月8万円の不足です。年間では96万円、10年で960万円、20年で1,920万円です。ここに医療、介護、住宅修繕、車の買い替えなどの大きな支出を別枠で考える必要があります。

日本年金機構は、老齢年金の繰下げ受給について、66歳以後75歳までの間で繰下げを選べる場合があり、増額率は1か月あたり0.7%と説明しています。繰下げは年金額を増やす選択肢ですが、受け取り開始までの生活費をどうするかも同時に考える必要があります。

年金額だけを増やすのではなく、退職金をどの期間の生活費として使うのかを一緒に見ることが大切です。

3|最後に見る数字は「退職金を何年で使うか」

退職金は、老後資金の不足分を埋める重要な資金です。しかし、退職金を何年で使う想定なのかを決めていない家庭は少なくありません。

毎月の不足額が5万円なら、年間60万円です。退職金から1,200万円を生活費補填に使うなら、単純計算で20年分です。毎月10万円不足するなら、同じ1,200万円でも10年分です。この差は大きいです。

ここで大切なのは、退職金をすべて生活費に使う前提にしないことです。住宅修繕、医療、介護、相続、子どもや親への支援など、予定外に見える支出も老後には起こり得ます。だからこそ、毎月の不足額を埋める資金と、臨時支出に備える資金を分けておく必要があります。

投資を考える場合も、この分け方が出発点です。当面使う予定があるお金を投資に回すのではなく、使う時期が遠いお金だけを検討対象にします。

平均額は「答え」ではなく「比較材料」

平均生活費を見ると、自分の支出が多いのか少ないのかを確認できます。しかし、平均より低ければ安心、平均より高ければ危険という単純な話ではありません。

持ち家で住宅ローンがない家庭、賃貸で家賃が続く家庭、車が必要な家庭、健康上の支出がある家庭では、必要なお金が変わります。老後資金は平均額に合わせるものではなく、自分たちの暮らしに合わせて設計するものです。

FP相談で行うべきことは、「平均ではこうです」と伝えることではありません。支出、年金、退職金、保険、運用を同じ表に並べて、どこに不安があるのかを見える化することです。

夫婦で年金25万円なら老後資金は足りるのか

夫婦で年金が月25万円ある場合、「これで老後資金は足りるのか」と考える方は少なくありません。足りるかどうかは、年金額だけでなく生活費によって変わります。

住宅ローンや家賃がない家庭、車を持たない家庭、保険料が抑えられている家庭では、月25万円でも大きな不足が出にくい場合があります。一方で、車が必要、住宅修繕費がかかる、医療費や介護費への備えを厚くしたい、旅行や趣味を続けたいという家庭では、年金だけでは不足することがあります。

大切なのは、平均額や世間の目安ではなく、ご家庭の毎月の支出を確認することです。年金25万円から生活費を差し引き、毎月いくら残るのか、または不足するのかを見ます。その不足額を退職金や預貯金で何年まかなえるかを確認すると、老後資金の見通しが立てやすくなります。

まとめ|老後資金は3つの数字で見える

老後資金を考えるときは、まず毎月の支出、次に年金見込額、最後に退職金を何年で使うかを確認します。この3つが見えると、必要以上に怖がることも、楽観しすぎることも減ります。

老後資金に正解の金額はありません。あるのは、自分たちの暮らしに合った必要額です。平均額は参考にしながらも、最後はご家庭の数字で判断しましょう。

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この記事を書いた人

Hajime Maeda(AFP、実務経験20年)。老後資金、退職金、年金をまとめて考える個別相談を行っています。

出典・参考

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