ブログ
BLOG
退職金を受け取ったとき、「住宅ローンを一気に返した方が安心ではないか」と考える方は多くいらっしゃいます。毎月の返済がなくなれば、退職後の家計は軽くなりますし、借金がないという安心感もあります。
一方で、退職金で住宅ローンを繰上返済する判断は、単純に借入残高を減らせばよいという話ではありません。手元資金が少なくなりすぎる、住宅ローン控除への影響がある、老後資金の取り崩しが早まるといった注意点があります。
この記事では、退職金で住宅ローンを繰上返済する前に確認したいことを整理します。税制や制度に関する部分は、国税庁・国土交通省などの出典に基づきます。
繰上返済を考えるとき、最初に見たいのはローン残高ではなく、返済後に手元に残る資金です。住宅ローンを減らしても、生活費や医療費、住宅修繕費、車の買い替え、親の介護費などに備えるお金が不足すると、別の不安が生まれます。
退職後は給与収入がなくなり、年金開始まで時間がある場合もあります。退職金を大きく繰上返済に使うと、年金開始までの生活費をどうまかなうかが問題になります。
繰上返済は、家計の固定費を下げる有効な方法になり得ます。しかし、老後資金の安全余裕まで削ってしまうと、安心のための返済が逆に不安を生むことがあります。
住宅ローン控除を受けている方は、繰上返済によって控除に影響が出る場合があります。国税庁は、繰上返済等をした場合の償還期間について、繰上返済後の償還期間で判定すると説明しています。繰上返済により「償還期間が10年以上」の要件に該当しなくなった場合、その年以後は住宅借入金等特別控除を受けられないとされています。
つまり、ローンを早く減らすメリットと、住宅ローン控除が使えなくなる可能性を比べる必要があります。控除額、金利、残期間、返済額、手元資金を同じ表に並べて確認することが大切です。
ここは個別の借入条件や取得時期によって変わるため、記事だけで結論を出すのは危険です。繰上返済前に、金融機関や税務上の条件を確認してください。
繰上返済には、全額返済と一部返済があります。全額返済は住宅ローンがなくなるため心理的な安心感が大きい一方、まとまった手元資金が減ります。一部返済は、返済額を抑えながらローン負担を軽くする方法です。
一部返済でも、返済期間を短くする方法と、毎月返済額を下げる方法があります。退職後の家計を考える場合、毎月の固定費を下げることが安心につながるケースもあります。一方で、総支払利息を減らしたいなら期間短縮型が選択肢になります。
どちらが良いかは、金利、残期間、家計の余力、手元資金の必要性によって変わります。
住宅ローンの繰上返済は、老後資金計画の一部です。退職金をローン返済に使った後、年金収入と生活費の差額をどのように埋めるかを確認する必要があります。
毎月の生活費が年金で足りる家庭では、繰上返済によって固定費を下げる意味が大きいかもしれません。反対に、年金だけでは毎月不足する家庭では、退職金を生活費として残す必要があります。
住宅ローンを返すことだけを見ていると、老後資金全体のバランスを見落とします。返済後の預貯金、年金開始時期、保険料、医療・介護への備えを合わせて確認しましょう。
住宅ローンが残っていることに強い不安がある方にとって、繰上返済は気持ちの面でも意味があります。老後に借金を残したくないという考え方は自然です。
ただし、安心感だけで退職金を大きく使うと、後から手元資金が足りなくなることがあります。まずは、繰上返済した場合としない場合で、毎月の支出、手元資金、老後資金の残り方を比較します。
数字で確認したうえで、それでも返済した方が気持ちよく暮らせるなら、その判断には意味があります。老後資金の相談では、損得だけでなく、安心して続けられる家計かどうかも大切です。
退職を前にすると、「退職金で住宅ローンを完済した方がよいのか」「完済してはいけないケースがあるのか」と迷う方がいます。退職金で住宅ローンを完済すること自体が悪いわけではありません。しかし、手元資金が少なくなりすぎる場合は注意が必要です。
退職後は、毎月の収入が給与から年金中心に変わります。年金開始まで時間がある方、医療費や住宅修繕費に備えたい方、車の買い替えや親の介護が想定される方は、住宅ローンを減らすことよりも、手元資金を残すことが優先になる場合があります。
また、住宅ローン控除を受けている場合は、繰上返済後の償還期間にも注意が必要です。国税庁は、繰上返済により償還期間が10年以上の要件に該当しなくなった場合、その年以後は住宅借入金等特別控除を受けられないと説明しています。
つまり、退職金で住宅ローンを返すかどうかは、残高だけでなく、手元資金、年金開始時期、生活費、住宅ローン控除、医療・介護への備えを一緒に見て決める必要があります。
退職金で住宅ローンを繰上返済することは、固定費を下げる有効な選択肢です。しかし、手元資金、住宅ローン控除、年金、生活費、医療・介護への備えを確認せずに決めるのは危険です。
住宅ローンだけを見るのではなく、退職金と老後資金全体の中で返済額を決めましょう。
退職金と住宅ローン返済を整理したい方へ
この記事を書いた人
Hajime Maeda(AFP、実務経験20年)。住宅ローン、退職金、老後資金をまとめて考える個別相談を行っています。
個別相談ご希望の方は
こちらからお問い合わせください。