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死亡後の口座からお金を下ろすとどうなる?|法律と実際のリスクを解説

2025.08.21
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死亡後の口座からお金を下ろすとどうなる?|法律と実務上のリスクを整理

はじめに

保険や相続のご相談の現場では、親が亡くなった直後や事前相談の段階で、
「ATMから引き出したら問題になりますか?」
という質問を受けることがあります。

生活費や葬儀費用など「今すぐ現金が必要」という事情は、現実に起こります。
ただし、“必要だった”ことと“やっていい”ことは別で、ここを取り違えると後からトラブルになります。

本記事では、判例や報道例も踏まえつつ、死亡後の口座引き出しに潜むリスクと、合法的に動くための選択肢を整理します。

相続は「手続き」の話に見えますが、突き詰めると家計全体の設計にも直結します。
将来のお金を平均や制度ではなく、自分の条件で整理したい方は、こちらも参考になります。


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1|死亡後の預金はどう扱われるのか?

預金は相続が発生した時点で、相続人全員の共有財産となります(※民法898条)。
最高裁は2016年の大法廷決定で、
「共同相続された預貯金は遺産分割の対象」と判示しました(※最高裁平成28年12月19日大法廷決定)。

つまり、遺産分割が終わるまでの預金は、「誰か一人のもの」ではありません
相続人の一人が単独で引き出すと、後から説明・精算が必要になり、揉める火種になります。


2|刑事事件に発展した実例

  • 銀行に対する詐欺(なりすまし・虚偽申告)
    2022年11月、医師の女性が死亡した患者の口座から1,930万円を養女を装って引き出そうとし、
    詐欺未遂・有印私文書偽造で逮捕されました(※朝日新聞2022年11月報道)。
  • 年金の不正受給
    2025年8月、父の死亡を隠し遺族年金53万円を引き出し続けた娘が逮捕されました(※FNN2025年8月報道)。
    2023年2月には、母の年金を隠し不正受給した息子に懲役2年の実刑判決が下されています(※KHB東日本放送2023年2月報道)。

銀行に虚偽の届け出をする、死亡を隠して年金を受け取る――。
こうした行為は典型的に詐欺罪(刑法246条)の対象となり得ます。


3|親族間だから大丈夫?「親族相盗例」の限界

刑法には「親族相盗例」(刑法244条)があり、直系血族や配偶者間の窃盗等は刑罰が免除されるケースがあります。

ただし、万能ではありません。最高裁は2012年、
「成年後見人が被後見人の財産を横領した場合には準用されない」と判示しました(※最高裁平成24年10月9日決定)。

そして何より重要なのは、
銀行や役所など“第三者”を相手に虚偽申告・なりすましをする行為には適用されないという点です。
「親族だから」「家族だから」で片づく話ではなく、手続きの相手が誰かでリスクは跳ね上がります。


4|民事責任としての返還義務

仮に刑事事件にならなくても、民事責任は残ります。代表的には以下です。

  • 不当利得返還請求(※民法703条)
  • 損害賠償請求(※民法709条)

実際に東京地裁は2021年、死亡後の引き出しについて
「相続分を超えた部分は不当利得として返還義務あり」と判断しました(※東京地裁令和3年9月28日判決)。

つまり、「引き出せた=自分のものになった」ではない
後から相続人間で帳尻合わせが必要になり、関係が崩れるきっかけになり得ます。


5|合法的に引き出せる「仮払い制度」

2019年の民法改正により「仮払い制度」が創設されました(※民法改正2019年施行・全銀協指針)。
葬儀費用や当面の生活費など、緊急性が高い場面で使える正規ルートです。

項目 内容
上限 金融機関ごとに150万円まで
計算式 残高 × 法定相続分 × 1/3
請求 相続人1人からでも請求可能

「急ぎの出費があるから、とにかく引き出す」ではなく、
まずはこの制度の範囲で安全に現金化できるかを確認するのが最も合理的です。


確認しておきたいこと

「バレるか、バレないか」で判断してしまうと、相続の場面では後から大きなトラブルになりやすくなります。

大切なのは、後から揉めない形で正規の手続きを踏めるかどうかです。葬儀費用や当面の生活費が必要な場合も、まずは預貯金の仮払い制度、必要書類、金融機関での手続きを確認することが安全です。

相続の場面は感情も絡みます。一度こじれると、手続きが長期化し、家族関係に傷が残ることもあります。迷ったら、金融機関、司法書士、弁護士、税理士など、状況に合った専門家に確認しましょう。

まとめ

  • 死亡後の預金は遺産分割まで相続人全員の共有財産
  • 単独の引き出しは不当利得返還・損害賠償の対象になり得る
  • 銀行への虚偽申告年金の不正受給は詐欺罪で逮捕事例あり
  • 必要資金は、まず仮払い制度(上限150万円)の活用を検討する

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この記事を書いた人

Hajime Maeda(AFP、実務経験20年)。相続発生後の家計整理、保険、老後資金を含めた家計全体の個別相談を行っています。

出典・参考



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