ブログ
BLOG
公開日:
子どもの住宅購入に500万円出してあげたい。でも、退職後の生活を考えると少し不安。そのときは、贈与税がかかるかだけでなく、渡した後に親の生活費と医療・介護に備えるお金が残るかを先に確認します。
子どもの負担を軽くしたい気持ちは、大切にしたいものです。ただ、「税金がかからず渡せる金額」と「親が無理なく渡せる金額」は別です。預金残高だけで決めず、500万円を援助する、金額を減らす、今回は援助しないという選択肢を並べてみましょう。
この記事の要点
預金、投資信託、株式などを一覧にし、退職金は手取り額と受取時期を確認します。住宅ローンなどの負債も並べます。自宅の評価額は、そのまま生活費として使えるお金ではありません。
死亡保険金も現在の生活資金には数えません。保険の解約返戻金を使うなら、受け取れる金額だけでなく、解約によって失う保障も確認します。資産の合計額と、必要な時期に使える金額を分けることが出発点です。
年金は額面ではなく、税金や社会保険料を考慮した手取りで見ます。生活費には固定資産税や保険料などの年払いも含め、毎月いくら不足し、それが何年続くかを考えます。すでに天引きされた負担を支出に重ねないよう注意してください。
退職後は通勤費が減っても、旅行や趣味、家の維持費が増えることがあります。「老後は支出が減るはず」と決めつけず、実際の口座やカードの明細から確認します。〔日本年金機構:年金額改定通知書・年金振込通知書〕
自宅の修繕、車の買い替え、住宅ローン返済、旅行や家族行事、他の子どもへの援助を、時期と金額で整理します。毎月の生活費に織り込んだ返済や積立分と重複して差し引かないようにします。
退職金を受け取った直後は余裕があるように見えても、すでに使い道が決まっている部分があります。資金の分け方は、退職金の使い方と配分の考え方でも整理しています。
公的制度があっても、支出の全額が賄われるわけではありません。介護施設では、サービス費の自己負担に加え、居住費、食費、日用品などがかかります。保険外サービスを使う可能性もあります。〔厚生労働省:サービスにかかる利用料〕
必要額は夫婦それぞれの健康状態、自宅で暮らすか施設へ移るか、家族の支援によって変わります。一律の金額を正解にせず、希望する暮らし方と利用できる制度を確認します。
金融資産が多くても、その大部分が投資信託や株式なら、援助後の預金が少なくなることがあります。相場が下がったときに、生活費のために投資資産を売らざるを得ない状態にならないかを見ます。
必要な現金は「生活費の何年分」と一律には決められません。年金で賄える割合や近い将来の支出が違うからです。援助後も、日常の支払いと急な出費に対応できる残高を確認してください。
以下は、実在のお客様の事例ではなく、同じ親世帯で援助額の違いを見る架空モデルです。夫婦とも65歳で、90歳までの25年間を比較します。
通常の生活費には年払いの経常的な支出を含め、400万円と500万円は重複しない別枠とします。運用益、物価変動、年金額の変動は基本比較に含めず、援助は開始時に一度行います。
25年間の生活費不足は、5万円×12か月×25年=1,500万円。予定支出と追加支出への備えは、400万円+500万円=900万円です。
スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
| 項目(単位:万円) | A:援助なし | B:500万円援助 | C:300万円援助 |
|---|---|---|---|
| 援助額 | 0 | 500 | 300 |
| 援助直後の金融資産 | 3,000 | 2,500 | 2,700 |
| 25年間の生活費不足 | ▲1,500 | ▲1,500 | ▲1,500 |
| 予定支出 | ▲400 | ▲400 | ▲400 |
| 医療・介護等への備え | ▲500 | ▲500 | ▲500 |
| 資金配分後の計算上の余力 | 600 | 100 | 300 |
医療・介護等の500万円は、平均費用や公的な必要額ではなく、このモデルの仮の予算です。備えとして確保したお金が、必ず全額支出されるわけではありません。最後の数字も、将来の資産残高予測ではなく、仮定に基づいて資金を配分した後の余力です。
500万円を援助しても計算上は収まりますが、想定外の支出への余力は100万円になります。ここから日常の決済に必要な残高も確認する必要があり、全額を自由に使えるとは限りません。援助なしでも無条件に安心とはいえず、300万円への減額も比較する意味があります。
年金手取りは同じで、生活費が月32万円となり、不足が月5万円から7万円に増えたらどうでしょうか。7万円×12か月×25年=2,100万円となり、必要な資金は600万円増えます。
スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。
| 資金配分後の余力 | A:援助なし | B:500万円援助 | C:300万円援助 |
|---|---|---|---|
| 不足が月5万円 | 600万円 | 100万円 | 300万円 |
| 不足が月7万円 | 0万円 | ▲500万円 | ▲300万円 |
これは物価上昇率を用いた予測ではありません。支出が増えた場合に計画がどの程度変わるかを見る「感度分析」です。マイナスは、予定支出と確保したい資金を合わせると不足するという意味で、直ちに生活できなくなることを示すものではありません。
90歳を超えて暮らす場合や、介護費用が予算を上回る場合も考えます。夫婦の一方が亡くなった後は、年金と支出の両方が変わります。年金を単純に半分とせず、本人の年金と遺族年金の扱いを年金事務所等で確認してください。〔日本年金機構:遺族厚生年金〕
援助後も複数の条件で暮らしを維持できるなら、500万円の支援を検討できます。一方、小さな支出増で計画が崩れる家庭は、金額や時期の調整が必要です。
子どもが必要とする金額と、親が出せる金額は別です。住宅契約前に援助の上限を伝え、子ども側も援助なしで返済可能かを確認します。援助で借入額を減らせるメリットはありますが、それだけで親の生活資金を削る理由にはなりません。
援助を前提に購入予算を膨らませず、兄弟姉妹への援助とのバランスも考えます。購入後の手元資金については、住宅購入時の頭金と将来の資産を比較した記事も参考になります。
贈与として渡すなら、将来子どもが返してくれることを親の老後計画の前提にしません。貸付にするなら、契約書だけでなく、実際の返済能力・返済実績や利息を含めた税務上の扱いを確認します。形だけの貸付は贈与と判断される場合があります。〔国税庁:親から金銭を借りた場合〕
誰から誰へ渡すのか、振込先、贈与の記録、住宅の持分(所有割合)も整理します。子ども夫婦の資金負担と持分が一致しないと、夫婦間の贈与課税が生じる場合があります。資金移動と登記を別々に決めないようにします。〔国税庁:共働きの夫婦が住宅を買ったとき〕
2026年10月6日時点で、現行制度の対象となる贈与期間は2024年1月1日~2026年12月31日です。父母・祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、一定の要件を満たすと、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで非課税となります。省エネ等住宅とは、所定の省エネ・耐震・バリアフリー性能のいずれかを満たし、書類で証明する住宅です。
受け取る人との親族関係、年齢・所得、住宅の床面積・性能、取得・入居時期、過去の特例利用などの条件があります。例えば配偶者の親は、養子縁組がある場合を除き、自分の直系尊属には当たりません。税額がゼロでも、特例を使うには所定の贈与税申告が必要です。〔国税庁:No.4508〕
住宅購入資金への援助と、既存の住宅ローンを返すための援助も別です。後者はこの非課税特例の対象になりません。〔国税庁:関連Q&A〕
住宅ローン控除との併用にも確認が必要です。控除の計算に使う取得対価等から、贈与の特例を受けた金額を差し引く扱いがあります。個別の適用可否や申告は税理士または税務署へ確認してください。〔国税庁:住宅借入金等特別控除のQ&A〕
2027年以降も同じ制度が続くとは限りません。期限だけを理由に援助を急ぐのではなく、親の家計と住宅計画が整っているかを優先します。
500万円を渡すことが悪いのでも、援助しないことが冷たいのでもありません。親が将来お金に困らないことも、子どもの負担を減らす支援になります。応援したい気持ちと、自分たちの暮らしを両立できる金額を考えましょう。
住宅資金の援助と老後資金を一緒に整理したい方へ
フィナンシャル・デザインオフィスMAEDA(運営:ツクス株式会社)では、退職金、年金、預金、運用資産、保険を含め、家計全体を整理します。相談料は1回33,000円(税込)です。個別相談の内容と料金をご確認ください。税務申告や税務上の個別判断は当オフィスで行わず、必要に応じて税理士等と連携します。
この記事を書いた人・編集監修
Hajime Maeda(前田創)。AFP、実務経験20年。フィナンシャル・デザインオフィスMAEDA(運営:ツクス株式会社)。退職金、老後資金、保険、住宅ローン、教育費など、家計全体を整理する相談業務を行っています。記事では制度の一般論だけでなく、実際の家計で確認すべき順番を重視しています。プロフィール
確認日:2026年10月6日。制度の適用は個別条件によって異なります。モデルは説明用の仮定に基づく独自計算であり、必要資金や将来の資産残高を保証するものではありません。
個別相談ご希望の方は
こちらからお問い合わせください。