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2026年7月の熊本地震をきっかけに考える本当に知っておきたい地震保険と家庭総合保険

2026.07.31

2026年7月28日16時27分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする地震が発生しました。気象庁の観測では、震源の深さは約10km、マグニチュードは7.1。熊本県内では最大震度7を観測し、九州の広い範囲で強い揺れがありました。

被災された方々、避難生活や片付け、生活再建に向き合っている方々に、心よりお見舞い申し上げます。

この記事を書いている2026年7月31日時点でも、被害状況や行政の対応は更新され続けています。住宅被害、停電、ガス・水道、交通、避難所の状況などは、必ず自治体、気象庁、首相官邸、消防、警察などの最新情報を確認してください。

今回の地震を受けて、改めて強く感じたことがあります。

住宅は、買えるかどうかだけで判断してはいけません。災害が起きたときに守れるか。火災保険や地震保険を、将来も更新し続けられるか。そこまで含めて、初めて無理のない住宅取得といえます。

住宅ローンの審査に通ることと、その家を災害から守りながら長く維持できることは別問題です。保険料が上がったから更新しない、家財や水災を外す、地震保険をやめる。そうした判断を軽く考えると、災害後の家計に大きなしわ寄せが来ます。

そのうえで、保険の相談現場では、災害のたびに同じような問い合わせが急増します。

「うちの火災保険で地震の被害は出ますか」
「地震保険には入っていたでしょうか」
「家財は付けていた方がよかったですか」
「保険料が高いので、更新時に外しても大丈夫ですか」

普段はあまり意識していない保険でも、地震や台風、豪雨のニュースを見ると、自分の家はどうなのかと急に不安になる。これは自然なことです。

ただ、問題はその後です。

不安になったときだけ保険証券を探し、しばらくすると忘れてしまう。更新案内が届いたときには、保険料の高さだけを見て補償を削る。住宅ローンを組むときに火災保険には入ったものの、その後の更新や地震保険、家財補償までは深く確認していない。

これでは、いざというときに「入っていると思っていたのに出なかった」ということが起こります。

この記事では、2026年7月の熊本地震をきっかけに、火災保険と地震保険の違い、地震保険の仕組み、家財補償の考え方、実際に多い保険請求の例、そして更新時に確認すべきポイントを整理します。

なお、住宅向けの火災保険には、保険会社や商品によって「家庭総合保険」などの商品名・名称が用いられる場合があります。この記事では読者の方が混乱しないよう、以後は原則として「火災保険」と記載します。

保険をむやみに増やしましょうという話ではありません。ただ、知らないまま削ってはいけない補償があります。

2026年7月の熊本地震で改めて浮かび上がったこと

今回の地震では、強い揺れだけでなく、津波注意報、停電、ガス供給への影響、避難所開設、救急要請など、生活全体に関わる問題が短時間で同時に起こりました。住宅そのものの損傷だけでなく、家財、ライフライン、仮住まい、通勤、子どもの生活、仕事への影響まで考えなければなりません。

災害時に家計を圧迫するのは、建物の修理費だけではありません。片付けに必要な費用、生活用品の買い直し、ホテルや親族宅への移動、通勤・通学の変更、仕事を休むことによる収入減少など、保険証券の表面だけでは見えにくい支出も出てきます。

だからこそ、地震保険と火災保険は「入っているかどうか」だけでは足りません。建物と家財のどちらを守っているのか。地震による火災に備えているのか。日常事故や台風、落雷まで含めて、どこまで補償されるのか。ここを確認する必要があります。

火災保険と地震保険は何が違うのか

まず整理したいのは、火災保険と地震保険の違いです。

一般に「火災保険」と呼ばれるものの中には、火災だけでなく、落雷、破裂・爆発、風災、ひょう災、雪災、水災、盗難、破損・汚損などを幅広く補償するタイプがあります。保険会社によっては、このような住宅向けの総合的な火災保険を「家庭総合保険」という名称で取り扱っています。

ただし、補償内容は保険会社や契約プランによって違います。「火災保険に入っているから何でも出る」という意味ではありません。

たとえば、火災保険で対象になりやすい事故には、次のようなものがあります。

事故の種類 主な例 確認したい点
火災 失火、もらい火など 地震が原因の火災は通常の火災保険とは別扱い
落雷 テレビ、アンテナ、エアコン、インターホンなどの故障 事故原因、経年劣化、修理業者の診断を確認
風災・ひょう災・雪災 台風で屋根やカーポートが破損 免責金額や支払条件に注意
水災 洪水、土砂災害、床上浸水など 水災補償を外している契約もある
盗難 家財の盗難、侵入時の窓ガラス破損 現金・貴金属などは限度額がある場合が多い
破損・汚損 子どもが壁に穴を開けた、テレビを壊した 補償対象外の契約もある

一方、地震保険は、地震・噴火・津波による建物や家財の損害に備える保険です。

ここで必ず押さえておきたいのは、地震保険は単独では入れないという点です。

地震保険は、火災保険に付帯して加入します。すでに火災保険に入っている場合は、契約期間の途中から地震保険を追加できることもあります。

住宅の保険を考えるときは、次の2階建てで見ると分かりやすくなります。

保険 主な役割
火災保険 火災、落雷、台風、水災、盗難、日常事故などに備える
地震保険 地震・噴火・津波による建物・家財の損害に備える

この2つは似ているようで、守っているリスクが違います。火災保険に入っていることと、地震の被害に備えていることは同じではありません。

地震保険の仕組みとよくある誤解

地震保険について、相談現場で多い誤解があります。

「壊れた分の修理費が全額出るんですよね」
「建物が少しでも傾いたら満額出るんですよね」
「家財は建物と一緒に判定されるんですよね」

いずれも正確ではありません。

地震保険は、実際にかかった修理費をそのまま補償する保険ではありません。建物や家財の損害状況に応じて、全損・大半損・小半損・一部損のいずれかに認定され、その区分に応じて保険金が支払われます。

現在の主な支払区分は次の通りです。

損害区分 支払割合 内容のイメージ
全損 地震保険金額の100% 建物や家財に極めて大きな損害がある状態
大半損 地震保険金額の60% 全損まではいかないが、かなり大きな損害がある状態
小半損 地震保険金額の30% 一定以上の損害がある状態
一部損 地震保険金額の5% 比較的小さいが、基準を満たす損害がある状態

支払割合だけを見ると、「一部損の5%では少ない」と感じるかもしれません。しかし、地震保険は修理費を細かく積み上げて支払う保険ではなく、被災後の生活の安定に役立てるための保険です。保険金の使い道も、修理費だけに限定されるわけではありません。

能登半島地震では地震保険の支払件数が12万件を超えた

地震保険が実際にどれほど使われているのか。直近の大きな地震である令和6年能登半島地震の数字を見ると、制度の現実味が分かります。

日本損害保険協会が2025年4月25日に公表した資料では、令和6年能登半島地震の地震保険について、2025年3月31日現在の支払件数は126,698件、支払保険金は104,789,948千円とされています。およそ1,048億円です。

地震保険は「めったに使われない特殊な保険」ではありません。大規模地震の後に、多くの家庭の生活再建を支える現実的な制度です。もちろん、地震保険だけで住宅再建のすべてをまかなえるわけではありません。それでも、建物や家財に損害が出たとき、手元資金だけで対応する家庭と、一定の保険金を受け取れる家庭では、その後の選択肢が変わります。

地震保険は建物と家財で別々に損害認定される

地震保険で必ず確認したいのが、建物と家財の違いです。

建物と家財は別々に契約し、別々に損害認定されます。建物に地震保険を付けていても、家財に付けていなければ、家財の損害は地震保険の対象になりません。

建物は、主要構造部などの損害状況を基準に現地確認が行われます。保険会社、損害保険登録鑑定人、建築や損害評価に関する専門知識を持つ担当者などが確認する場合があります。

家財は、被害品目や数量、写真、申告内容、聞き取りなどをもとに確認される場合があります。災害の規模や保険会社の運用によって、調査方法は異なります。

「建物を見に来た担当者が、家財も自動的にすべて認定してくれる」とは限りません。建物と家財の両方に加入している場合は、それぞれについて請求意思を伝えることが大切です。

たとえば、建物は一部損に届かなくても、家財が一部損に認定されることがあります。反対に、建物に損害が認定されても、家財は対象外ということもあります。

「家は大丈夫だったから保険は出ない」と思い込んでいたら、実は家財で請求できた。こういうこともあります。

地震による火災は、通常の火災保険だけでは足りない

これは要注意です。

地震による火災は、通常の火災保険だけでは補償されないケースがあります。

火災保険に入っていれば、火事は何でも出る。多くの人がそう思っています。けれど、地震を原因とする火災、地震によって延焼・拡大した火災、地震による倒壊後の火災などは、通常の火災保険では補償されないのが基本です。

たとえば、次のようなケースです。

  • 地震で建物が損傷し、その後に火災が発生した
  • 地震で電気設備やガス設備に異常が起こり、火災につながった
  • 近隣で発生した地震火災が延焼してきた
  • 地震による倒壊後に火災が広がった

このようなとき、原因が地震にあると判断されると、火災保険だけでは十分な補償を受けられない可能性があります。

地震だけではありません。隣家からの延焼など、住宅火災で家計が大きな影響を受けるケースについては、大分の大火が突きつけた現実 「隣の火事でもあなたの家計が破綻する」その本当の理由でも詳しく解説しています。

一部の火災保険には、地震火災費用保険金のような補償が付いていることもあります。しかし、それは地震保険そのものとは違います。支払額が限定的だったり、建物再建や生活再建に十分な金額にはならなかったりします。

「火災保険に入っているから大丈夫」

この思い込みは危険です。地震・噴火・津波による損害まで考えるなら、地震保険を付けているかどうかを確認する必要があります。

「家財なんて大した金額じゃない」という誤解

地震保険の相談でよく聞くのが、家財補償を軽く見る言葉です。

「家財は別にいいです」
「うちは高級な家具もないので」
「家財なんて大した金額じゃないでしょう」

しかし、家財は思っている以上に多いです。

テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、ソファ、ベッド、テーブル。もちろん、それらも家財です。ただ、家財は大型家電や家具だけではありません。

  • 靴下一足、下着、衣類、靴、バッグ
  • 布団、毛布、カーテン、ラグ
  • 食器、鍋、フライパン、調理器具
  • 電子レンジ、炊飯器、掃除機、空気清浄機
  • パソコン、スマートフォン、プリンター、通信機器
  • 学習机、本棚、本、文房具、教材
  • 子どものおもちゃ、スポーツ用品、部活動用品
  • 洗面用品、日用品、工具、季節用品

人は、5年前、10年前に買った物の価格を忘れます。普段使っている物を「資産」や「家財」と認識していないことも多いです。

災害後に同等の生活を取り戻すには、想像以上の買い直し費用がかかります。寝る場所を整える。着るものを買う。食事を作れるようにする。子どもの学校生活を戻す。仕事に必要なパソコンや通信環境を用意する。

4人家族なら、衣類、寝具、靴、生活用品、学用品が人数分必要です。

今、自宅にある物をすべて失ったとして、200万円や300万円で家族全員の生活用品を買い直せるでしょうか。

もちろん、家財の保険金が購入価格どおりに必ず支払われるわけではありません。契約金額、損害認定、再調達価額か時価か、対象外品、貴金属等の限度額など、契約条件によって扱いは異なります。

それでも、「高級家具がないから家財はいらない」という判断は乱暴です。家財保険はぜいたく品を守るためだけのものではありません。暮らしを戻すための保険です。

火災だけの補償にすれば、本当に十分なのか

火災保険の更新時に、「火災だけ残せば安くなりますか」と聞かれることがあります。

住宅が全焼する事故は、頻繁に起こるものではありません。だから、火災だけに補償を絞れば保険料は安くなる可能性があります。

ただし、火災保険の役割は火災だけではありません。実際には、落雷、風災、ひょう災、雪災、水災、盗難、飛来物、破損・汚損など、暮らしの中で起こる事故にも関わります。

保険料が安いこと自体が悪いのではありません。問題は、安くなった理由を理解していないことです。何を外した結果、その保険料になっているのかを確認してください。

ネット保険か代理店型かという販売経路だけで良し悪しを判断する話でもありません。ネットで契約しても、補償内容を理解していれば合理的な選択になることがあります。反対に、代理店で契約していても、契約者本人が内容を分かっていなければ、いざというときに困ります。

大切なのは、契約者が補償内容と対象外事項を理解しているかどうかです。

実際の請求で多いのは、家が燃えるケースばかりではない

火災保険というと、多くの人は「家が燃えたときの保険」と考えます。

もちろん、それは大きな役割です。

ただ、実務で受ける相談も、住宅が全焼したケースばかりではありません。落雷、風災、飛来物、偶発的な破損など、日常の延長で起こる事故の相談が少なくありません。

熊本地震と同じ時期、東海地方では激しい雷雨がありました。翌日、顧客から「近隣に雷が落ちた後、テレビが映らなくなった」と連絡を受けました。地震のニュースで災害への意識が高まっていたところに、別の地域では落雷被害の相談が入る。保険の現場では、こうしたことが普通に起こります。

落雷でテレビ・アンテナ・インターホン・エアコンが故障

落雷後にテレビが映らなくなった。テレビアンテナが故障した。インターホンが反応しなくなった。エアコンの基板が壊れた。

こうした相談は珍しくありません。落雷による電気機器の故障は、火災保険で対象になることがあります。ただし、必ず保険金が支払われるわけではありません。契約内容、補償項目、免責金額、事故原因、経年劣化の有無、修理業者の診断などによって判断されます。

台風でカーポートや屋根まわりが破損

台風や強風の後には、カーポートの屋根が飛んだ、物置が倒れた、屋根の一部が破損した、雨どいが外れたといった相談が増えます。

風災補償があれば対象になる可能性がありますが、経年劣化との区別が問題になることもあります。古い傷まで台風被害として請求することはできません。損害がいつ、何によって起こったのかを正直に確認する必要があります。

飛来物で窓ガラスが割れた

強風で飛んできた物が窓ガラスに当たり、ガラスが割れることもあります。小さな事故に見えても、防犯面や生活面ではすぐに修理が必要です。

こうした場合も、契約内容によっては火災保険・家庭総合保険の対象になることがあります。免責金額が設定されている場合は、修理費と自己負担額を比べて請求するかどうかを判断します。

子どもが壁に穴を開けた、ゲーム機でテレビを壊した

日常事故として多いのが、子どもが遊んでいて壁に穴を開けた、家具を動かしていて壁や床を傷つけた、というものです。

破損・汚損等の補償が付いていれば対象になることがあります。ただし、保険会社や商品によって補償範囲は違います。小さな傷や使用による劣化は対象外となることがあります。

ゲーム機のコントローラーが手から飛んでテレビ画面に当たり、画面が割れた。子どもが遊んでいて液晶テレビを倒した。こうした相談も実際にあります。

家が燃えるような事故ではありません。けれど、テレビの買い替えや壁の修理にはまとまったお金がかかります。破損・汚損補償や家財補償が付いているかどうかで、対応できる範囲が変わります。

ここで伝えたいのは、「何でも請求しましょう」という話ではありません。

保険は、契約内容を知らなければ使えません。そして、使える場面を知らないまま保険料だけを払い続けている人が少なくありません。

火災保険で確認したい補償

火災保険を確認するときは、保険料だけを見ないでください。

見るべきポイントは、補償の範囲です。

確認項目 見るべきポイント
建物の補償 保険金額は再建・修理に見合っているか
家財の補償 家族人数や生活用品に見合った金額か
水災補償 洪水・土砂災害・床上浸水に備える必要がある地域か
風災・ひょう災・雪災 台風・強風・積雪リスクに対応しているか
破損・汚損 日常事故まで対象にしたいか
個人賠償責任 自転車事故や水漏れなどに備えているか
免責金額 いくらまでは自己負担になるか
地震保険 建物・家財それぞれ付帯しているか

特に水災補償は、近年よく削られます。

「うちは高台だから不要」
「ハザードマップで色が付いていないから不要」

そう判断できる家庭もあります。けれど、土砂災害や内水氾濫、道路冠水、排水能力の問題まで含めると、単純に標高だけでは判断できません。

補償を外すこと自体が悪いわけではありません。問題は、理由を確認せずに外すことです。

土砂崩れは水災補償を外していると対象外になることがある

地震とあわせて確認しておきたいのが、豪雨や台風による土砂崩れです。

土砂崩れで建物や家財に被害が出た場合、火災保険の水災補償が付いていないと補償されないことがあります。水災という言葉から「川の氾濫」や「床上浸水」だけを想像しがちですが、契約上は土砂災害が水災として扱われることがあります。

水災補償を外す判断は、ハザードマップだけでは決められません。豪雨による水災被害と備えについては、2025年8月 豪雨による九州・中国地方の水災被害と備えの重要性でも整理しています。

山や斜面が近い地域、造成地、擁壁のある住宅地、過去に土砂災害警戒区域に指定された地域では、保険料だけを見て水災補償を外す判断は慎重にしてください。ハザードマップで洪水の色が付いていなくても、土砂災害のリスクは別に確認する必要があります。

更新時に無保険化する人が増えている

最近、住宅の保険で特に気になるのが、更新時の無保険化です。

過去には、火災保険で30年、35年といった長期契約ができた時期がありました。その後、最長10年となり、現在は原則として最長5年の契約が中心です。保険会社や商品によっては、さらに短い保険期間となる場合もあります。

そのため、10年前に10年契約で入った火災保険の保険料と、現在の5年契約の保険料が同程度、あるいはそれ以上になるケースがあります。契約期間は短くなっているのに、支払う保険料の負担感は大きく上がっている。更新案内を見て驚く人が増えるのも無理はありません。

さらに、築年数の古い住宅では、引受条件が厳しくなる場合があります。補償項目、免責金額、建物の状態などについて追加確認を求められることもあります。

こうした背景から、更新時に補償を大きく削ったり、場合によっては火災保険そのものを更新しない人が出ています。

これはかなり危険です。

保険料が高くなったから更新しない、という判断は簡単です。しかし、火災や台風、落雷、地震は、家計の都合を待ってはくれません。自己資金で住宅の再建や修理ができない家庭ほど、無保険になる危険性を重く考える必要があります。

住宅ローンが残っている場合、建物に大きな損害が出てもローン返済は消えません。修理費や仮住まいの費用がかかる一方で、住宅ローンの返済は続きます。

持ち家でローンが終わっている場合でも同じです。建物の修理費は自己負担になります。年金生活に入ってから大きな修理費が発生すると、老後資金に直接響きます。

補償を見直す場合も、「払えないから削る」で終わらせないでください。何を自己資金で負担でき、何を保険で残す必要があるのか。家計全体で判断する必要があります。

更新を先延ばしにして無保険の期間を作るのは避けてください。災害は、更新手続きが終わるまで待ってくれません。

築年数の古い住宅は、購入前に火災保険の加入条件を確認する

中古住宅は、価格だけで判断してはいけません。

築30年を超える住宅、古い家、修繕履歴がはっきりしない住宅では、希望する保険会社や補償内容で火災保険に入れない場合があります。建物構造、築年数、屋根や外壁の状態、過去の修繕状況によって、保険会社の確認が必要になることもあります。

購入後に保険を探せばよい、と考えるのは危険です。売買契約の前に、火災保険の保険料と引受条件を確認してください。

  • 水災補償を付けられるか
  • 風災・ひょう災・雪災の補償はどうなるか
  • 破損・汚損まで付けられるか
  • 免責金額はいくらになるか
  • 地震保険を建物・家財に付けられるか
  • 修繕履歴や建物状態について追加資料が必要か

安い中古住宅でも、修繕費、固定資産税、保険料を含めると家計負担が大きくなる場合があります。中古住宅そのものを否定しているわけではありません。むしろ、家計に合う良い選択になることもあります。

ただし、購入価格だけで「安い」と判断しないことです。住み続けるために必要な維持費まで確認してから、買うかどうかを決めてください。

住宅ローンが組めることと、安心して住み続けられることは別

住宅を購入するとき、多くの人は住宅ローンの審査を気にします。

いくら借りられるのか。毎月返済はいくらか。金利は固定か変動か。住宅ローン控除は使えるのか。

もちろん大事です。けれど、住宅取得で本当に考えるべきなのは、ローンだけではありません。

  • 固定資産税
  • 火災保険・地震保険の更新
  • 外壁、屋根、給湯器、設備の修繕費
  • 子どもの教育費
  • 車の買い替え
  • 親の介護費用
  • 自分たちの老後資金

住宅を持つこと自体に反対しているわけではありません。家族にとって安心できる場所を持つことには、大きな意味があります。

しかし、将来の火災保険・地震保険の更新、固定資産税、修繕費、教育費まで含めると維持できないのであれば、その住宅取得計画は一度立ち止まって見直すべきです。

住宅ローンが組めることと、安心して住み続けられることは別です。

相談現場で家計を見ていると、住宅購入時には何とか返済できるように見えても、10年後、15年後に苦しくなる家庭があります。住宅を買う時期は、子どもがまだ幼く、教育費がそれほどかかっていない家庭も多いです。ところが10年後には、子どもが中学生、高校生になっているかもしれません。塾、部活動、進学費用が増える時期です。

同じ頃に、外壁、屋根、給湯器、エアコンなどの修繕費が出てくることがあります。火災保険や地震保険の更新も重なります。購入時点の家計だけで「大丈夫」と判断するのは危険です。

住宅購入を前提としたライフシミュレーションと、住宅を購入しない選択肢まで含めた中立的な家計設計では、結論が異なることがあります。シミュレーション自体が間違っているという意味ではありません。前提条件が違えば、導き出される結論も変わります。ハウスメーカーや住宅販売を前提としたFPの試算を参考にすること自体は悪くありません。ただし、そのまま信じるのではなく、教育費や老後資金、修繕費、保険更新まで自分の家計で確認してください。

借りられる金額ではなく、教育費や老後資金を確保しながら維持できる金額で判断する。住宅ローンが組めることと、安心して住み続けられることは別です。

特に火災保険は、住宅購入時に一度契約して終わりではありません。更新があります。補償内容の見直しがあります。保険料の変化があります。

地震保険も同じです。最初は付けていたのに、更新時に外してしまう。家財だけ外す。保険料が高いから最低限にする。

その判断が悪いとは言いません。ただし、外した後に何が起こるかは考えておくべきです。

  • 地震で建物に損害が出た場合、自己資金でどこまで対応できるか
  • 家財を買い直す余裕はあるか
  • 仮住まいの費用は出せるか
  • 住宅ローンと修理費を同時に払えるか
  • 教育費のピークと重なったらどうするか

ここまで考えて初めて、保険を削る判断ができます。

保険は「入るか入らないか」ではなく、家計の中で考える

保険の話になると、すぐに「必要か不要か」という議論になりがちです。

地震保険は高い。火災保険は使う機会が少ない。家財保険はいらない。水災補償は外してもいい。

どれも、家庭によっては正しい場合があります。

十分な貯蓄があり、被害が出ても自己資金で修理できる家庭なら、補償を絞る選択もあります。築年数や立地、建物構造、家族構成によっても必要な補償は変わります。

ただ、保険料だけを見て判断するのは危険です。

保険は、家計の弱い部分を補うためのものです。貯蓄で対応できる部分は貯蓄でよい。自分で負担できない部分だけ保険で備える。この順番で考えると、過剰な保険にも、不足した保険にもなりにくくなります。

家庭総合保険や地震保険も同じです。

家が壊れたらいくら必要か。家財を買い直すといくらか。仮住まいになったら生活費はいくら増えるか。住宅ローンは残っているか。教育費のピークと重ならないか。

ここを見ずに、保険料だけで判断しないでください。

火災保険はいつ見直すべき?

火災保険の見直しは、災害が起きた後だけに行うものではありません。生活や住まいの状況が変わるタイミングで、補償内容と保険料を確認してください。

  • 更新通知が届いたとき
  • 家族構成が変わったとき
  • 子どもが生まれたとき
  • リフォームしたとき
  • 中古住宅を購入したとき
  • 保険料が大きく上がったとき

特に更新時は、「火災保険が高いから削る」と考えやすい場面です。見直し自体は必要ですが、何を外した結果、どのリスクを自分で負担することになるのかまで確認してください。

今すぐ確認してほしいチェックリスト

災害が起きてから保険証券を探すのでは遅いことがあります。今のうちに、次の項目だけでも確認してください。

チェック項目 確認
火災保険の保険期間はいつまでか
次回更新日はいつか
建物の保険金額はいくらか
家財補償を付けているか
地震保険を付けているか
地震保険は建物だけか、家財もあるか
水災補償を付けているか
風災・ひょう災・雪災の補償はあるか
破損・汚損補償はあるか
個人賠償責任補償は付いているか
免責金額はいくらか
古い家電や設備の故障が補償対象になるか
満期後も同じ条件で更新できるか
保険料が上がった場合、どの補償を残すか決めているか
住宅ローン残高と修理費を同時に払えるか
家財を買い直す資金を別に用意できるか

保険証券を見ても分からない。それは珍しいことではありません。

しかし、分からないまま更新し、分からないまま補償を削ることは危険です。

まずは担当者や保険会社に、次のように確認してください。

  • 今の補償は、現在の家族構成と家計に合っていますか
  • 建物と家財の地震保険は付いていますか
  • 水災や土砂災害への補償はありますか
  • 落雷や台風、カーポート破損、飛来物による窓ガラス破損は対象になりますか
  • 満期後も同じ条件で更新できますか

この5つだけでも、かなり見え方が変わります。

よくある質問(FAQ)

火災保険だけで地震の被害は補償されますか?

原則として、火災保険だけでは地震による建物や家財の被害は補償されません。地震を原因とする火災も、通常の火災保険では対象外となるのが基本です。

地震・噴火・津波による損害に備えるには、火災保険に地震保険を付帯しているかを確認してください。一部の火災保険には地震火災費用保険金が付いている場合がありますが、地震保険そのものとは別の制度です。

地震保険だけ加入できますか?

地震保険だけを単独で契約することはできません。地震保険は、火災保険に付帯して加入する保険です。

すでに火災保険に加入している場合は、契約期間の途中から地震保険を追加できることもあります。現在の契約で途中付帯できるかは、保険会社や担当者に確認してください。

家財保険はいくらくらい必要ですか?

必要な家財保険の金額は、家庭によって異なります。家族人数、生活用品、家具家電、衣類、学用品、再調達費用を基準に考えます。

家財はテレビと冷蔵庫だけではありません。衣類、寝具、食器、調理器具、子どもの学用品、仕事に使うパソコンなども、買い直すとなると大きな金額になります。

火災保険の見直しはいつ行えばいいですか?

火災保険は、次のようなタイミングで見直してください。

  • 更新通知が届いたとき
  • 住宅購入時
  • 中古住宅購入時
  • リフォーム後
  • 家族構成が変わったとき
  • 保険料が大きく変わったとき

保険料だけではなく、補償内容も一緒に見直してください。

災害は予言ではなく、備えで対応するものです。防災と家計の備えについては、7月5日予言より、今見直したい防災と家計の備えでも解説しています。

まとめ

家は、購入できれば終わりではありません。

災害が起きても生活を維持できること、保険や修繕費を将来も負担できることまで含めて、住宅取得です。

火災保険は、火災だけでなく、落雷、台風、飛来物、日常事故など、暮らしの中で起こる多くの損害に関わります。地震保険は、地震・噴火・津波による建物や家財の損害に備えるための保険です。

地震保険は単独では入れません。火災保険に付帯して加入します。建物と家財は別々に契約し、別々に損害認定されます。地震による火災は、通常の火災保険だけでは補償されないケースがあります。

家財は、決して小さな金額ではありません。水災や破損・汚損を外せば保険料は下がるかもしれませんが、その分だけ自分で負担するリスクが増えます。

保険料が上がっている今、補償を見直すこと自体は必要です。ただし、削るなら理由を持って削る。残すなら何を守るために残すのかを決める。

私が実務を通じて大切だと感じているのは、保険を増やすことではありません。住宅ローン、教育費、修繕費、老後資金まで含めた家計の中で、何を保険で守り、何を自己資金で負担するのかを整理することです。

保険は不安をあおるためのものではありません。万一のときに、生活を立て直す時間を確保するためのものです。

まずは今日、保険証券を一度開いてみてください。

私は保険を増やすことを勧めたいわけではありません。大切なのは、「何を自己資金で備え、何を保険で備えるのか」を家計全体で考えることです。保険料だけを見て判断するのではなく、10年後、20年後も安心して住み続けられる住まいになっているか。熊本地震をきっかけに、一度ご自身の住宅と家計、そして保険の備えを見直してみてください。

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この記事を書いた人・編集監修

Hajime Maeda。AFP、実務経験20年。退職金、老後資金、保険、相続、教育費など、家計全体を整理する相談業務を行っています。記事では制度の一般論だけで結論を急がず、実際の家計で確認すべき順番を重視しています。

出典・参考

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