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保険や相続のご相談の現場では、実際に親が亡くなった際や事前相談の段階で、
「ATMから引き出してもバレないから大丈夫ですよね?」
と聞かれることがあります。
確かに「みんなやっている」という声もありますが、法律上はそう単純な話ではありません。
今回は判例や新聞報道を踏まえ、死亡後の口座引き出しに潜むリスクを整理します。
預金は相続が発生した時点で、相続人全員の共有財産となります(※民法898条)。
最高裁は2016年の大法廷決定で、
「共同相続された預貯金は遺産分割の対象」と判示しました(※最高裁平成28年12月19日大法廷決定)。
つまり、遺産分割が終わるまでは一人だけで勝手に引き出せません。
→ 銀行に虚偽の届け出をする、死亡を隠して年金を受け取るといった行為は、典型的な詐欺罪(刑法246条)の対象です。
刑法には「親族相盗例」(刑法244条)があり、直系血族や配偶者間の窃盗等は刑罰が免除されます。
しかし最高裁は2012年、
「成年後見人が被後見人の財産を横領した場合には準用されない」と判示しました(※最高裁平成24年10月9日決定)。
また、銀行や役所に対する虚偽申告など第三者をだます行為には特例は適用されません。
刑事責任を免れても、民事責任は残ります。
実際に東京地裁は2021年、死亡後の引き出しについて「相続分を超えた部分は不当利得として返還義務あり」と判断しました(※東京地裁令和3年9月28日判決)。
2019年の民法改正により「仮払い制度」が創設されました(※民法改正2019年施行・全銀協指針)。
仕組みは以下の通りです:
→ 葬儀費用や生活費に使える、唯一の正規ルートです。
「バレないから大丈夫ですよね?」と聞かれることは少なくありません。
ですが現実には、新聞報道レベルで逮捕・実刑になったケースも存在します。
どうしても必要な資金は仮払い制度を用い、後のトラブルを避けるのが安心です。
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