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「火災保険だけでいいと思っていた…」――能登半島地震が示した“地震保険の現実”

2025.12.05

「火災保険だけでいいと思っていた…」――能登半島地震が示した“地震保険の現実”

1|あるあるシナリオ:あなたの火災保険は本当に大丈夫か

火災保険の更新案内が届いたとき、ふと胸の中に生まれる小さな不安――。

「あれ、地震保険ってどうしていたっけ?」

この“モヤッとした感覚”は、決して大げさでも、あなた特有の心配でもありません。全国的に見ても、火災保険に加入していても地震保険が付いていない家庭は少なくなく、実はこの状態こそが大きなリスクにつながります。

その危機感をより強くしているのが、令和6年に発生した能登半島地震です。


2|令和6年能登半島地震が突きつけた“自分事のリアル”

2024年1月1日16時10分。最大震度7(M7.6)。

新年の団らんを一瞬で奪った能登半島地震は、石川県を中心に想像を超える破壊をもたらしました。

損害保険協会が2025年3月末時点で公表した最新の支払データでは、次のような数字が明らかになっています。

  • 事故受付件数:179,245件
  • 支払件数:126,698件
  • 支払保険金:1,047億円

地域別の支払実績も極めて現実的です。

  • 石川県:59,948件/576億円
  • 富山県:33,643件/236億円
  • 新潟県:24,052件/179億円

単純平均でも1世帯あたり100万円前後の保険金が支払われた計算となり、生活再建に直結する金額が迅速に届けられたことが分かります。

特筆すべきはそのスピード。

  • 発災90日後:調査完了率 89.8%
  • 発災150日後:調査完了率 96.9%

火災保険では補償されない地震被害に対し、地震保険が“実効性のあるセーフティネット”として機能した象徴的な災害でした。

2-1|航空写真による“全損認定”という新しい取り組み

能登半島地震では、道路・インフラ被害のため調査員が現地に入れない地域が多数発生しました。そのため業界として初めて、

「航空写真による共同調査」

が導入され、倒壊家屋に対する全損認定が、現地に入れない状況でも進みました。

これは、地震保険が「迅速な生活再建」を目的とした制度であることを、まさに体現した事例です。


3|地震保険の加入状況:数字が示す“空白リスク”

3-1|付帯率69.7%という数字の“正しい読み方”

火災保険に地震保険を付帯している割合は69.7%。しかしこれは「火災保険加入者のうち」であり、日本全世帯ベースではありません。

3-2|世帯加入率はわずか35.1%

世帯単位の加入率は35.1%にとどまります。つまり、日本の約65%の世帯は、地震保険に加入していない状態です。

3-3|古い住宅ほど加入率が低いという矛盾

地震保険加入住宅の約8割は1991年以降の新耐震基準。一方で、1990年以前の旧耐震住宅の加入率は著しく低い傾向があります。

構造的に脆弱な住宅ほど加入していない――という危ういギャップが生まれています。


4|なぜ地震保険から“脱落”してしまうのか

4-1|「何となく高そう」という印象

地震保険に加入しない理由のトップは、具体的な根拠のない「高いイメージ」。次いで「預金で何とかなる」「家財は消耗品」といった誤解が続きます。

4-2|住宅ローン完済後の“補償外し”が最も危険

ローン返済中は保険加入が実質必須ですが、完済後に補償を外す家庭が多いのが現場感です。

ローンがない=再建費用を全額自分で負担するという意味です。


5|熊本地震・能登半島地震が示した“建物と家財の壊れ方”

5-1|熊本地震の家財全損率は64%

  • 建物:半損以上 28%
  • 家財:半損以上 64%

家そのものより「家財」の損害が生活再建の障壁となったのが熊本地震でした。

5-2|能登半島地震でも家財の損害は甚大

家具転倒、家電破損、食器全壊、液状化による床上浸水――。
家財補償の有無で、生活再建のスピードが大きく分かれました。


6|地震保険の仕組みと「保険料の正しい見方」

6-1|補償上限の基本

  • 建物:火災保険金額の30〜50%(上限5,000万円)
  • 家財:火災保険金額の30〜50%(上限1,000万円)

6-2|地震保険の保険料は“会社ごとに違わない”

火災保険とは違い、地震保険は全国共通の仕組みで運用されています。

  • 料率は「損害保険料率算出機構」が作成
  • 財務省が認可し、全国の保険会社が同一の料率を使用
  • 割引制度(耐震等級・建築年・免震など)も全国統一
  • 特約・免責の自由設計は不可

したがって、同じ建物条件であればどの保険会社で加入しても保険料は同じです。

6-3|愛知県における「基準料率」の目安

ここでは、読者の理解のため制度に基づく目安を示します。

(出典:損害保険料率算出機構「令和4年10月1日以降保険始期 地震保険基準料率」)

  • 愛知県・イ構造(非木造):11,600円/年(保険金額1,000万円あたり)
  • 愛知県・ロ構造(木造):19,500円/年(保険金額1,000万円あたり)

地震保険は、

  • 1〜5年の長期契約係数
  • 全国統一の割引(耐震等級・建築年数・免震など)

を適用し、最終的な保険料が決まります。

【ご注意】
上記は制度に基づく一般的な基準料率であり、実際の保険料はご加入内容や割引の適用可否によって変わる場合があります。最終的な金額は、必ず最新の見積書でご確認ください。


7|今すぐできる3つの見直しポイント

7-1|火災保険更新時は必ず「地震保険の有無」を確認

7-2|住宅ローン完済後の家こそ、最優先で加入すべき

7-3|家財補償を外していないか確認


8|結局のところ、「気になった時」が最適な見直しのタイミング

能登半島地震で被災した多くの方々も、前日まで普通の生活を送っていました。

気になった今こそ、行動すべき時です。

名古屋で火災保険・地震保険・老後資金の総合設計を相談したい場合は、どうぞお気軽にお問い合わせください。あなたの資産状況に合わせて、最適な“守りの設計”をご提案します。


参考資料

  • 損害保険協会「令和6年能登半島地震の支払状況(2025年3月末)」
  • 財務省「地震保険の加入促進について(令和7年5月23日)」
  • 損害保険料率算出機構「地震保険基準料率(令和4年10月1日以降保険始期)」
  • 損害保険料率算出機構「消費者の地震危険意識調査」

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