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なぜ「いい制度」なのに、選択制確定拠出年金が“形骸化”する会社が出るのか

2026.01.07

「選択制確定拠出年金(選択制DC)は、制度としては非常に優れている」

これは間違いありません。
一方で実務の現場では、

「結局、うまく回らなくなった」
「今はほとんど使っていない」

という声が聞かれるのも事実です。

ただし、ここで最初に明確にしておくべき前提があります。

企業型DCは、会社都合で自由に廃止できる制度ではない

企業型確定拠出年金は、会社が一方的に「やめる」と決められる制度ではありません。

  • 厚生労働省の承認を受けた年金制度であり
  • 受給権は法律で保護され
  • 不利益変更や一方的な廃止は原則不可

つまり、

「導入したけど、やっぱりやめます」

という判断は、制度上できない。

ではなぜ、「やめた」「失敗した」と言われる会社が出てくるのでしょうか。

実務で起きているのは「廃止」ではなく「形骸化」

現場で起きているのは廃止ではありません。
多くの場合、次のような“事実上の撤退”です。

  • 新規拠出を停止する
  • 新規加入者を受け入れない
  • 他の制度へ移行する

制度は残っているが、機能していない状態
本記事ではこれを「形骸化」と呼びます。

形骸化の引き金になる5つの現実

現実①|導入時に「制度は完成した」と思ってしまう

選択制DCは、導入時に制度設計・規程整備・説明会を行います。
この段階で、

「ここまでやったのだから、あとは自然に回るはず」

と考えてしまう会社は少なくありません。

しかし実際には、導入はスタート地点に過ぎません。

  • 制度の理解は時間とともに薄れる
  • 新入社員には改めて説明が必要
  • 社内の質問は継続的に発生する

これを想定していないと、制度は次第に放置されます。

現実②|説明コストが想像以上に重い

選択制DCは、一度の説明で理解される制度ではありません。

  • 給与がどう変わるのか
  • 社会保険料がなぜ下がるのか
  • 将来の年金にどんな影響があるのか

これらを、年齢も価値観も異なる従業員全員に伝える必要があります。

結果として、

  • 管理部門への問い合わせが増える
  • 説明負担が積み上がる
  • 「触れないほうが楽」という空気が生まれる

ここから、制度の形骸化が始まります。

現実③|不満は「声の大きい一部」から表面化する

選択制DCに納得している従業員は、あまり声を上げません。

一方で、

  • 手取りが減ったと感じる人
  • 将来より今の生活を重視する人

こうした一部の不満は目立ちます。

経営者の耳に残るのは、全体の評価ではなく「強い不満の声」です。

現実④|何もしない従業員が一定数必ず出る

選択制DCは「選択制」です。
つまり、行動しないことも選択できます。

  • 商品を選ばない
  • 拠出額だけ決めて放置
  • 制度を理解しないまま時間が過ぎる

この状態が数年続いたあと、

「こんな制度だとは思わなかった」

という声に変わることがあります。

現実⑤|結果として「拠出停止」という判断に近づく

ここまでの現実が積み重なると、経営者・管理部門の頭に浮かぶのはこの判断です。

「制度としては残すが、新たな拠出は止めよう」

これは廃止ではありません。
しかし、制度は次第に存在感を失い、実務上は使われなくなっていく。

形骸化する会社と、機能し続ける会社の分岐点

形骸化する会社

  • 導入がゴール
  • 節税・社会保険料対策が主目的
  • 導入後の運用を想定していない

機能し続ける会社

  • 導入はスタート
  • 人件費設計の一部として位置づけている
  • 説明・フォローを前提にしている

制度の捉え方の差が、数年後に表面化します。

選択制DCは「覚悟を持って扱う制度」

選択制確定拠出年金は、

  • 簡単にやめられない
  • 従業員の将来に影響する
  • 会社の姿勢が問われる

だからこそ、導入前に「本当に運用し続けられるか」を見極める必要があります。

次の記事予告

次回は、「得をする従業員・そうでない従業員が分かれる理由」を従業員視点で整理します。
経営者が見落としがちな論点です。

法人向け制度設計のご相談について

選択制確定拠出年金は「導入できるか」ではなく、
「導入後も機能させ続けられるか」がすべてです。

制度の可否整理、形骸化リスクの洗い出し、説明設計まで含めてご相談いただけます。

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