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【記事作成日:2025年12月8日】
ここ数週間、日本の10年国債利回りは1.9%台後半まで上昇し、2007年以来となる水準に達しています。ニュースでも「18年ぶりの高金利水準」といった見出しが並びました。
とはいえ、多くの方にとって「国債の利回りがいくつか」自体には、あまりピンと来ないかもしれません。
ただし、50代・60代の方にとって、今回の金利上昇は「横目で眺めていればいい話」ではなく、預金・ローン・保険・退職金の扱い方にダイレクトに効いてくる環境変化です。
いま少し視点を変えておくかどうかで、老後20~30年のキャッシュフローに、数百万円単位の差が出る可能性があります。
この記事では、
を、できるだけ具体的な数字を交えながら整理します。
日本は2024年3月に約8年続いたマイナス金利政策を解除し、その後、政策金利を段階的に引き上げてきました。2025年に入っても追加の利上げが行われ、市場では「さらに0.75%程度まで上がるのではないか」といった観測が続いています。
この流れを受け、10年国債利回りは足元で1.9%台後半まで上昇し、「名目2%」が現実的な射程距離に入っている状況です。
50代・60代の多くの方が社会人として働いてこられた平成後半~令和前半は、「ゼロ金利」「0%台の長期金利」が当たり前の時代でした。その意味で、いま起きているのは
「人生の後半戦に入ったタイミングで、金利環境がガラッと変わった」
という、かなり大きな転換点です。
「金利が上がったということは、日本は危ないのでは?」
そんな声も時々耳にします。
ここで参考になるのが「CDSスプレッド(クレジット・デフォルト・スワップ)」という指標です。ざっくり言えば、
「その国がデフォルトしたときに備える“保険料”のようなもの」で、この数字が高いほど「危なっかしい国債」と評価されます。
直近の日本の5年物CDSスプレッドは、およそ0.2%前後という水準です。
一般に2%を超えると「財政的にかなり危ないゾーン」と見なされますので、その1/10以下ということになります。
格付会社のレーティングとは別に、実際にリスクを取ってお金を動かしている市場参加者が「日本国債の信用度」をどう見ているか──その結果として、この数字が出ています。
もちろん、日本の財政に課題がないわけではありません。ただ、少なくとも現時点では「日本国債の信用不安で金利が跳ね上がっている」という状況ではなく、あくまで金融政策の正常化とインフレ対応の一環として金利が上がっていると捉えてよいでしょう。
長く続いたゼロ金利時代、メガバンクの普通預金は年0.001%という、ほぼゼロに近い金利が続いていました。
ところが、2025年に入って状況は一変します。三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行などのメガバンクは、普通預金金利を年0.2%へ引き上げました。
ネット銀行や高金利の普通預金口座に目を向けると、さらに差は広がります。
1,000万円の預金を想定すると、税引前の単純計算で、
差は年間3万円前後です。10年で見れば30万円。ご夫婦それぞれに同程度の預金があれば、「何もしていないだけで」差額はさらに膨らみます。
退職金の一部や、教育費が一段落して動かしていない預貯金がある方にとって、「どの銀行に置いておくか」だけで結果が変わる時代になりました。
変動金利で住宅ローンを組んでいる方は、ここから数年の動きを冷静に見ておく必要があります。
政策金利が上がれば、銀行の貸出金利もいずれ連動していきます。特に、50代・60代でまだ数千万円単位の残債があるケースでは、残り返済期間が短い分、金利上昇の影響が月々のキャッシュフローに直撃します。
たとえば、3,000万円残債・残り20年程度・元利均等返済で、金利が1.0%上がると、目安として
月2万円台後半~3万円前後の返済増になるケースもあります(具体額は契約条件によって異なります)。
「定年後の収入で、今より+3万円を毎月払い続けられるか?」
この問いに違和感があるなら、今のうちから手を打っておくほうがいいでしょう。
代表的な対策は次の3つです。
ローンの残り年数・退職時期・退職金見込み額との「三点セット」で見ると、取るべき打ち手はかなり変わります。
生命保険・個人年金保険の返戻率は、基本的に「予定利率(運用利回りの前提)」に影響を受けます。
長期金利が上がる局面では、新しく出てくる商品ほど返戻率が改善しやすい環境です。
一方、超低金利時代に契約した商品は、その時の前提のまま固定されているケースも多く、「払い続けている割に増えない」設計になっていることがあります。
個人向け国債を例に取ると、2025年12月募集の「個人向け国債・変動10年」の初回利率は、年1%強の水準にあります。
保険会社が長期運用の一部を国債で行うことを考えると、こうした金利上昇は、今後の商品設計(返戻率)にも徐々に反映されていきます。
特に確認したいのは、次のような方です。
「なんとなく続けている」ものほど、金利環境の変化で相対的な魅力が下がっていることがあります。
まず、紙でもエクセルでも構いませんので、次の項目を書き出してみてください。
そのうえで、
を確認します。
「いまは動かすのが面倒だ」と感じるかもしれませんが、人生後半の10~20年のスパンで見ると、面倒くささに見合うリターンになりやすい作業です。
住宅ローンが残っている方は、次のポイントを書類で確認してください。
変動金利の場合は、「金利が+0.5%」「+1.0%」になったとき、月々いくら増えるのかを、借入銀行に試算してもらうのが手っ取り早いです。
その結果を踏まえ、
を検討することになります。
生命保険の証券を出して、次のような視点で眺めてみてください。
特に、「なんとなく安心のために持っているけれど、具体的な数字は知らない」保険が一番やっかいです。
金利環境が変わると、過去の前提で設計された商品と、これから設計される商品との間で「コスパ」に差が出てきます。
ここまで読んでいただいて、
「結局、自分は何から手をつければいいのか」
「預金・ローン・保険を一度に考えるのはしんどい」
という感覚があるとしたら、それはごく自然な反応です。
そんなときは、次の3つの質問に、自分なりの答えを書き出してみてください。
ひとつでも答えに詰まるようであれば、そこが見直しの入口です。
金利情報そのものよりも、ご自身とご家族のお金の「設計図」が描けているかどうかのほうが、よほど重要だからです。
低金利期は「とにかく減らさないように守る」発想になりがちでした。
一方、今のような金利上昇局面では、
「いつ・何に・いくら置いておくか」を組み替えるだけで、守りながら増やす余地が生まれる
という側面があります。
イメージとしては、次のような時間軸で考えると整理しやすくなります。
どれか1つの商品が「正解」なのではなく、ご家庭のキャッシュフローと寿命のタイムラインに合わせて、預金・国債・保険・投信をどう並べるかが勝負どころです。
金利が動き始めると、「難しい話だから、また今度でいいか」と先送りしたくなるお気持ちはよく分かります。
ただ、50代・60代というタイミングを考えると、「また今度」がそのまま「何もしないまま定年」につながりやすい年代でもあります。
もう一度だけ、シンプルに整理します。
どれも、「知らなかった」「面倒だった」で済ませるには、金額のインパクトが大きすぎます。
一方で、すべてをご自身だけで判断しようとすると、時間もエネルギーも必要です。
そのギャップを埋めるために、私のようなファイナンシャル・プランナーが存在します。
もし、
と感じていらっしゃるようでしたら、一度、落ち着いて現状を“見える化”してみませんか。
ご相談の流れや費用については、当オフィスのホームページにまとめてあります。
「ご相談はこちら」から、いつでもお問い合わせください。
この記事が、「日本国債2%時代」をきっかけに、ご自身とご家族のお金の設計図を描き直す一助になれば幸いです。
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