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相続放棄の期限は3ヶ月!実務で迷わない“動く順番”とNG行為リスト

2025.10.21

相続放棄の期限は3ヶ月!実務で迷わない“動く順番”とNG行為リスト

相続が発生した直後は、喪主対応や各種手続きで心身ともに余裕がありません。それでも「3ヶ月(熟慮期間)」の中で、相続承認・限定承認・相続放棄のいずれかを決めないと、知らないうちに単純承認(借金も含めてすべて引き継ぐ)扱いになり得ます。
本記事では、50〜60代のご家庭で起こりがちな落とし穴に焦点を当て、最短経路で判断にたどり着くための手順と注意点を解説します。

1|まず押さえる結論(要点)

  • 期限の基準は「亡くなった日」ではなく、原則『自分が相続人になったことを知った日』から3ヶ月
  • 3ヶ月以内に申述(家庭裁判所へ書類提出)できればOK。審査の完了は期限後でも差し支えありません。
  • 迷うときは「熟慮期間の伸長(延長)」を申立可能。まずは時間を確保して冷静に調査。
  • 限定承認は相続人全員の共同手続き。一人でも反対・不在だと難航します。
  • 相続放棄は原則撤回不可。放棄前の「うっかり処分」が法定単純承認に当たると放棄自体が不可能に。

2|実務フロー|相続発生〜3ヶ月の動く順番

  1. 相続関係の把握:戸籍収集(出生〜死亡)、法定相続人の確定。
  2. 財産調査(プラス/マイナス):通帳・定期・証券口座、不動産、保険、貸付・借入、連帯保証、税・社会保険料の未納、医療費、家賃・原状回復費など。
  3. 郵便・明細の確認:クレジット・リボ、カードローン、スマホ決済、サブスク、リース。ポストの転送手配も忘れずに。
  4. 隠れ債務の芽を洗い出す:保証人の可能性、未払い医療費、滞納公租公課、賃貸の原状回復、事業用の与信。
  5. 方向性の仮決定:(A)単純承認/(B)限定承認(全員同意前提)/(C)相続放棄。
  6. 間に合わないとき:家庭裁判所へ熟慮期間の伸長申立(申立書・収入印紙・切手)。
  7. 家庭裁判所へ申述:相続放棄または限定承認の申述書を提出。

3|表で確認|3ヶ月でやることと窓口

やること 具体例 主な窓口
相続人確定 戸籍(出生〜死亡)の収集、法定相続情報一覧図の作成 市区町村、法務局
財産調査 通帳・証券・保険、借入・連帯保証、税・社会保険・医療費・家賃 金融機関、税務署、年金事務所、賃貸管理会社
熟慮期間の確保 調査が間に合わない→熟慮期間の伸長を申立 家庭裁判所(被相続人の最後の住所地)
申述(期限内) 相続放棄 or 限定承認(限定承認は相続人全員で 家庭裁判所

4|“見落としがちな隠れ債務”チェックリスト

  • 生前の連帯保証(知人・親族・事業先)
  • クレカのリボ・分割・ETC未清算、カードローン、家電・車のローン
  • 賃貸の原状回復費用・管理費・共益費、駐車場の解約清算
  • 未払い医療費、介護サービス費、固定資産税・住民税・国保・年金保険料などの公租公課
  • リース・レンタル・サブスク、携帯端末の分割払い
ポイント|通帳からの引き出し・名義変更・売却はNG
放棄や限定承認を検討中の段階で相続財産を処分すると法定単純承認(放棄できなくなる)に該当するおそれ。
保存行為(緊急の修繕や最低限の管理など)を超える手出しは避けるのが安全です。

5|限定承認という選択肢(ただし全員同意が前提)

プラスとマイナスが読み切れないときは限定承認。相続で得た財産の範囲内でのみ債務を負担する制度です。ただし相続人全員で共同申述が必要で、期限は放棄と同じく「知ったときから3ヶ月」。実務では、全員の足並みをそろえる段取り(連絡・日程・資料共有)が詰め所です。

6|3ヶ月で決め切れないときの延長(熟慮期間の伸長)

財産調査が間に合わないときは、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長申立を行います。一般的に、収入印紙(相続人1人あたり)と郵便切手の用意が必要。まずは時間を確保し、落ち着いて資料を集めましょう。

7|よくある勘違いQ&A

Q1. 「3ヶ月以内に家庭裁判所の審査が終わらないとアウト?」
→いいえ。3ヶ月以内に“申述(提出)”できればOK。審査が期限をまたいでも差し支えありません。
Q2. 相続放棄は後から撤回できる?
原則できません(取消しが認められる特殊ケースは別)。放棄の前に十分な調査と相談を。
Q3. 放棄したら一切関係なくなる?
→放棄すると最初から相続人でなかった扱いになりますが、次順位(兄弟姉妹など)に相続が回ります。
ご家族全体の影響を考えて判断しましょう。

8|現場の“落とし穴”あるある

  • 家財や車を早々に売却・廃棄してしまい、処分=単純承認扱いの火種に。
  • 賃貸の解約で原状回復費が後追い請求。鍵の返却・立会い・清算書の確認を忘れない。
  • 香典返し・葬儀費の立替を相続財産から“勝手に”精算してトラブルに。
  • 限定承認を選んだが、相続人の一部が連絡不通で期限切れに。

9|チェックリスト(印刷推奨)

  • 相続人の確定(戸籍一式・法定相続情報)
  • 預貯金・証券・不動産・保険の洗い出し
  • 借入・連帯保証・税・医療費・賃貸清算の確認
  • 郵便物・カード明細・サブスク・リースの停止と未払チェック
  • 熟慮期間の満了日メモ/間に合わない場合は伸長申立
  • 相続放棄・限定承認の申述書類の下書き(早めに)
ご相談の流れ(当オフィス)
1)状況ヒアリング → 2)財産・債務の棚卸し支援 → 3)方針(承認/限定承認/放棄)の仮決定 → 4)家庭裁判所の申述準備
「家族にどう伝えるか」「実務の段取り」まで伴走します。
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(注)本記事は一般的解説です。実際の手続きは事情により異なります。税理士・弁護士・司法書士等の各専門家と連携の上、適切に進めてください。

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