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公的年金の繰下げ受給、75歳まで待つと84%増!損益分岐点を徹底計算

2025.11.14

公的年金の繰下げ受給、75歳まで待つと84%増!損益分岐点を徹底計算

「年金は65歳からもらうもの」という常識は、もう古いかもしれません。受給開始を遅らせる繰下げ受給を選ぶと、2022年の制度改正以降は最長75歳まで繰下げ可能となり、1か月当たり0.7%増額されます。最大の120か月(10年)繰下げで+84%の増額となります。

例:
月額15万円(年間180万円)の年金 → 75歳開始(+84%)で 月額約27.6万円(年間約331万円)

1|年金繰下げ受給の基本

  • 原則の受給開始は65歳。
  • 繰下げは1か月ごとに+0.7%の増額。
  • 75歳まで繰下げ可能(最大+84%)。
  • 対象は老齢基礎年金・老齢厚生年金(加給年金など一部は注意点あり)。

2|増額の具体例(モデルケース)

モデルA:月額15万円(年間180万円)を想定

  • 65歳開始:年間180万円(=月15万円×12)
  • 75歳開始(+84%):年間180万円×1.84=約331万円(月約27.6万円

モデルB:月額23.3万円(年間約279.6万円)を想定

  • 65歳開始:年間約279.6万円
  • 75歳開始(+84%):279.6万円×1.84=約514.5万円(月約42.9万円

※実際の年金額は加入実績・加給の有無・物価スライド等で変動します。上記は計算上の参考値です。

3|損益分岐点(累計受取額が並ぶ年齢)

繰下げでは65〜75歳の10年間は受け取らないため、その未受給分を増えた年金で取り戻す年齢が損益分岐点です。

  • 未受給分の目安(モデルB):月23.3万円×120か月=約2,796万円
  • 75歳開始の増額後年金(月約42.9万円)で回収すると、損益分岐点は概ね86〜87歳が目安。

平均寿命・平均余命を踏まえると、女性は損益分岐点を超える可能性が相対的に高い一方、男性は個人差が大きく、健康状態や家族歴などの要素が重要です。

4|「損得」だけで判断しない

数字の有利不利だけでなく、次の視点も重要です。

  • 生活資金の余裕:退職金や貯蓄・就労収入で75歳まで無理なく賄えるか。
  • 使いたい時期:元気な60〜70代に旅行・趣味へ使いたいか、それとも80代以降に厚く備えたいか。
  • 家族戦略:配偶者の受給開始時期・遺族年金・相続設計との整合。

5|見落としがちな注意点(隠れコスト)

  • 税・社会保険料:年金増により所得税・住民税・介護保険料負担が増える場合があります。医療費自己負担割合も所得で変化する層に注意。
  • 加給年金:厚生年金の加給年金は、厚生年金の受給権発生時期に依存します。繰下げの仕方で加給の加算が遅れたり、対象外となる期間が生じ得ます。
  • 在職老齢年金:繰下げ・受給・就労の組み合わせによって支給停止や調整が起こることがあります(就労収入との合算基準に留意)。
  • 物価・賃金改定:将来のスライド改定や制度改正の影響を受ける可能性がある点は共通のリスク。

6|代表的な判断シナリオ

シナリオA:貯蓄・退職金が十分(例:退職金2,000万円超、再雇用・事業収入あり)
→ 75歳までの繰下げは有力候補。80代以降の医療・介護期のキャッシュフローが安定。

シナリオB:健康寿命に不安(家族歴や診断結果に不安)
早めの受給で「元気なうちに使う」設計。60代からの生活満足度を優先。

シナリオC:当面の生活が厳しい
→ 原則どおり65歳開始を軸に、家計改善・就労・社会制度活用を優先。無理な繰下げは避ける。

7|最適解は人によって違う(個別最適のすすめ)

  • 現在の資産・収入・支出(退職金・貯蓄・就労)
  • 健康状態と寿命予測
  • 配偶者の年金・働き方・遺族年金
  • 税務・医療/介護費・相続の意向

これらを一体で設計してこそ、繰下げの価値は最大化します。損益分岐点の年齢だけで決めないことが重要です。

8|まずは「自分の数字」で試算を

本記事の数値は制度ロジックに沿った概算です。実額は「加入期間・平均標準報酬・加給の有無・就労の有無・税区分」などで大きく変わります。
ご自身の見込額・税保険料の影響・配偶者との最適な同時最適化まで一度試算することをおすすめします。

(ご希望があれば、あなたの条件で「65・68・70・72・75歳」など複数開始時点のキャッシュフロー比較と損益分岐年齢のレンジを作成します)

注意・免責:本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の受給開始時期の選択を勧誘・推奨するものではありません。実際の受給額・税金・社会保険料・各種加算/停止の有無は、加入記録・収入状況・居住自治体等により大きく異なります。最終判断にあたっては、日本年金機構等の最新公表資料の確認と、必要に応じて専門家(年金アドバイザー・社会保険労務士・税理士・FP等)へご相談ください。

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