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退職金の運用期間は何年が正解か?|平均余命から逆算する資産寿命設計

2025.11.05

退職金の運用期間は何年が正解か?|平均余命から逆算する資産寿命設計

退職金を受け取ったとき、多くの方が最初に抱くのは「このお金、いったい何年もつのか?」という不安です。

・100歳まで生きたら足りなくなるのでは?
・何年を想定して運用計画を立てるべき?
・自分の寿命なんてわからない…

こうしたモヤモヤを整理する第一歩が、「資産寿命計画(ライフスパン設計)」です。
退職金を何年のスパンで運用するかを明確にすることで、“老後の安心の見える化”が始まります。

1|平均余命から見える「資産寿命」の現実

厚生労働省の「簡易生命表(2023年)」によると、
日本人の平均寿命は男性81.1歳、女性87.1歳。
ただしこれは「0歳児の平均寿命」です。
60歳や65歳時点の“残りの生存年数”を示す「平均余命」は、もう少し長くなります。

年齢 男性の平均余命 女性の平均余命
60歳 約22.1年(82歳) 約28.8年(88歳)
65歳 約18.3年(83歳) 約24.0年(89歳)
70歳 約14.9年(85歳) 約19.7年(90歳)
75歳 約11.9年(87歳) 約15.6年(91歳)

つまり、65歳で退職した男性なら「約20年」、女性なら「約25年」は生活が続くということ。
さらに健康寿命が延びている現代では、90歳〜100歳まで生きる可能性も視野に入れるべきです。

2|3つのシナリオで運用期間を設定する

将来の見通しを立てるには、複数の前提で試算するのが現実的です。
退職金の運用期間は、次の3つのシナリオで考えてみましょう。

  • 保守的シナリオ:90歳まで(男性約25年/女性約20年)
  • 現実的シナリオ:95歳まで(男性約30年/女性約25年)
  • 安全シナリオ:100歳まで(男性約35年/女性約30年)

「長生きリスク」を避けるには、100歳までを想定しておくと安心です。

3|年間の取り崩し額を算出する

運用期間が決まれば、年間にどれだけ取り崩せるかが見えてきます。

年間取り崩し額 = 退職金 ÷ 運用年数

例:退職金2,000万円を30年間で運用する場合
→ 2,000万円 ÷ 30年 = 年間約67万円(約5.6万円/月)

この金額は、年金収入に上乗せする“補助的な生活資金”として考えるとイメージしやすいでしょう。

4|実例シミュレーション

ケース1|64歳・夫婦で退職金2,500万円

  • 想定寿命:100歳(36年間)
  • 年間取り崩し額:2,500万円 ÷ 36年 = 約69万円
  • 運用利回り3%の場合、元本維持〜やや増加も可能

→ 年金(夫婦合計 約25万円/月)+ 取り崩し6万円/月 = 月31万円の生活資金

ケース2|60歳・独身・退職金3,000万円

  • 想定寿命:95歳(35年間)
  • 年間取り崩し額:3,000万円 ÷ 35年 = 約86万円
  • 公的年金:月15万円+取り崩し約7万円=月22万円の収入イメージ

5|運用期間を決める際の4つのチェックポイント

  • 健康状態・生活習慣を考慮:平均寿命+5〜10年の余裕を持つ
  • 配偶者の寿命も加味:長い方の寿命を基準に
  • 医療・介護費の上振れを想定:生活費3年分+医療費の別枠を確保
  • 利回り設定は現実的に:年2〜4%を目安に、インフレ率を上回る程度で

6|今すぐできる実践ステップ

  1. 想定寿命を決める
    健康診断や家族の傾向も踏まえて、目標年齢を設定。
  2. 年間取り崩し額を算出
    退職金を想定年数で割り、生活費の補填イメージを掴む。
  3. ポートフォリオを構築
    5年分の生活費は安全資産、残りは分散投資に回す。
  4. 定期見直し
    年1〜2回、健康・市場の変化に応じて調整。

まとめ

退職金の運用期間を「平均余命から逆算」して設計することで、
“漠然とした不安”が“数字で見える安心”に変わります。

人生100年時代。
正確に寿命を当てることは誰にもできませんが、長く生きる前提で備えることが、最も現実的なリスク対策です。

情報提供と免責(2025/11/05時点):本記事は公表資料に基づく一般的な解説であり、特定の運用・商品を推奨するものではありません。詳細や最終判断は、必ず公的機関・金融機関の最新資料をご確認ください。

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